鹿児島県警の不祥事再発防止策について審議する県議会総務警察委員会の冒頭、「県民に多大な不安を与え、改めておわび申し上げます」と頭を下げる野川明輝・県警本部長=2024年8月6日、鹿児島県議会

 ところで今、百条委設置の是非でもめている県がある。鹿児島県議会だ。近いうちに百条委が設置されるかどうかが議会で結論づけられるのだが、これこそ強い勢いで全国で報道すべきことではないか。鹿児島県警の問題だ。身内が引き起こした事件をもみ消し続けてきたことが報じられ、今、鹿児島県議会で百条委を設置する声があがっているのだ。

 鹿児島県警の闇の深さがどれほどのものか、少し触れるだけでも、言葉を選ばずに言えば「おぞましい」レベルである。もみ消しが試みられたとされる事件の多くがストーカーや盗撮など、女性が被害になる事件だ。

 昨年4月以降に30代の男性巡査長(当時)が、巡回連絡簿で携帯電話番号を知った女性に性的メッセージを複数回送っていたが、県はこのことを把握後すぐに公表しなかった。

 2019〜23年の間に女性トイレで盗撮を繰り返していた30代の男性巡査部長(当時)についても、事実がわかった後も捜査せず、「泳がせた」ことが明らかになっている。この男性は勤務中にも繰り返し盗撮をしていた。

 そしてこの2件を告発した60代の男性元職員は、今年5月に国家公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕、6月に起訴されてしまったのだ。まるで社会派刑事ドラマのような事件が警察内で起きているのである。

 さらに昨年2月には50代の男性巡査部長が20代の女性の勤務先に何度も押しかけるストーカー事件が起きた。女性は恐怖を感じ一人暮らしを解消し実家から通わなければならなくなった。警察に被害を訴えたがまともに取り合ってもらえず、不信感を抱いた女性が情報開示を求めたところ、そもそも調査記録が「存在しない」ことがわかった。この50代の男性巡査部長は書類送検され、不起訴処分。今も警察官をやっている。

 21年には元警察官の男性の息子が性暴力事件で容疑者になった。その後、この容疑者には元警察官の父親と弁護士が同席で丁寧に面会したのに対して、被害女性には弁護士の同席を許さず、告訴状の受け取りを数時間にわたって拒否したことが報告されている。

 また、こちらはもみ消されているわけではないが、昨年10月には28歳の男性巡査長(当時)が13歳未満の少女に性的暴行した疑いで逮捕された(一審で有罪判決)。

 男性警察官による女性をターゲットにした性暴力やストーカー、それはどれほどの恐怖だろう。どれほどの不信を社会に蔓延させるだろう。

 今、より報ずべきは東京の男女関係よりも鹿児島県警内の人間関係。兵庫のパワハラも重要だが、鹿児島の性暴力ともみ消しももっと報じてほしい。そして百条委が正しく鹿児島県議会で設置されるかどうか……を追いかけてほしい。

 女性たちが被害にあう大変な事件が、日々、この国では起きているのだ。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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