今日は桃の節句。「す〜こし しろざけ めされたか♪ あ〜かい おかおの 右大臣〜」(童謡『うれしいひなまつり』)。この歌が事実なら、大人の男性が少し飲んだだけで顔が赤くなってしまうなんて、白酒のアルコール分はけっこう高そうです。けれど、そもそも白酒って晴れ着姿の少女たちが飲むために作られたものなのでは? もしや子供の頃ひなまつりに飲んだ白酒は、歌とは違う飲み物だったのでしょうか?! そして桃の花との関係は・・・

白いお酒に浮かぶ紅い花。めでたさ満開です
白いお酒に浮かぶ紅い花。めでたさ満開です
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●3月は桃の生命力。桃花酒から白酒へ

ひなまつりの始めは『上巳(じょうし・じょうみ)の節句』といって男女関係なく邪気を払う季節の節目の行事でした。白酒が飲まれるようになったのは、江戸時代中期になってから。
室町時代には、桃が「百歳(ももとせ)」に通じることから、酒に桃の花を浮かべた「桃花酒(とうかしゅ)」を飲む風習があったといいます。
旧暦の3月はじめは、日本人の大好きな桜が満開。それでも「ひなまつりには桜の花」とはならなかったのです。
「桃」の漢字は「木」と「兆(きざし)」。占いで焼いた亀甲の割れ目を表す象形文字です。物事の前触れや始まり、ふたつに割れるという意味から、女性の妊娠・出産と結びついたといわれます。
桃・李(すもも)・梅・杏を中国では『四種果実』といいますが、どれも漢字のパーツが妊娠・出産や母親を表しているのだそうです。桜にはそういう意味がないので、女の子の節句としては不適切とされたのでしょうか。とはいえ 桜も橘とともに「左近の桜・右近の橘」として雛壇の両側を守っています。
桃は中国では不老長寿の薬「仙人の果実」として、実・葉・枝・樹皮などあらゆる部分が漢方薬となり、神への供え物となりました。日本でも、卑弥呼の時代の遺跡などから 祭祀に使われていたと思われる大量の桃の種が発掘されています。桃は生命力の象徴、厄よけの果実だったのですね。
3月は、桃の香りで元気に過ごせそうです。

「左近の桜・右近の橘」。もちろん天皇から見ての左右なのですね
「左近の桜・右近の橘」。もちろん天皇から見ての左右なのですね

●人気すぎて命が危険!! チケット制の白酒とは

ところで 白酒を飲んだことはありますか?
じつは、現代人で白酒を飲んでいる人は意外と少ないのだそうです。とくに「子供時代ひなまつりで飲んでいた」という方は、その思い出がカン違いである可能性大!?
白酒は、蒸したモチ米(もろみ)の飯粒をすりつぶし、麹とみりんまたは焼酎を入れ、一ヶ月くらい熟成させたもの。甘く特有の香りと濁りがあり、アルコール分も10%前後ある、立派なお酒なのです。酒税法上の「リキュール」に該当し、家庭で作ることは禁止されています。いくら昔は少々緩かったといっても子供の飲酒じたいが法律違反・・・もし合法的に家で作って飲んでいたなら、それはたぶん「甘酒」です。

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