映画の祭典、米国アカデミー賞。いよいよ今月末に授賞式が迫ってきました。
映画好きの筆者は、アカデミー賞授賞式が近づくともう一つ気になるイベントが。そうです、前日に開催されるゴールデンラズベリー賞です。別名最低映画賞。誰がもらっても嬉しくなさそうなこの賞。何故これだけ根付き、映画ファンに愛される人気イベントとなったのでしょう。調べてみると意外なエピソードなどが続々。人気の秘密がわかってきました。
始まりは? 誰が選んでいるの?
もともとは映画宣伝や監督業の仕事をしていた映画関係者ジョン・ウィルソン氏が1981年に創設したのが始まりです。
本来は「RAZZ(野次) AWARD」が正式な賞名だそう。その「野次」を意味する「RAZZ」には「ラズベリー」というもう一つの意味もあり、親しみやすい「ラズベリー賞」という呼び方が一般に普及していったようです。栄誉ある(?)トロフィーにもラズベリーのデザインが施されています。
では一体誰が、どのような方法で選考しているのでしょうか。本家・アカデミー賞と比較してみましょう。
なんとどちらも同じくその名を冠したそれぞれの団体「映画芸術科学アカデミー」「ゴールデンラズベリー賞財団」の会員達の投票により選出されています。大きく違うのがその団体の会員達のキャラクター。
本家・アカデミー賞の会員は俳優・監督・撮影などなど実際に映画制作に携わる人々。
そしてラズベリー賞の会員は…なんと40ドル支払い会員になった一般の映画ファン達。
そうなんです、私達一般ファンも約4,500円の入会金さえ払えば投票することもできるのです。同業者同士or映画料金を支払い映画観賞をしている一般映画ファン…さぁ、一体どちらが公平で映画ファンの民意が反映されているのでしょうか? 答えは一目瞭然ですね。ゴールデンラズベリー賞の人気の秘密がわかってきました。
受賞理由は「最低」だけではかたづけられない深いものでした
創設初期にはいわゆる「B級映画」が受賞部門の殆どが占めていたラズベリー賞。しかし、ただただつまらない作品に賞を与えているのではないようです。もちろん、誰もが認める(?)駄作が賞に輝く事もありますが、もう一歩踏み込んだ理由で受賞している作品や俳優達も。例えば前評判や宣伝ばかりが大きく取り沙汰され実際にはそれほどでもなかった超大作。またアカデミー賞受賞など輝かしい実績があるにもかかわらず高額の出演料につられ駄作に出演してしまった俳優達。こんなユーモアと皮肉たっぷりな理由で賞が与えられる事も。
誰も口に出しては言わずとも「うんうん、そうよね。」と思わせてくれる受賞理由。受賞後にカルト映画として人気が再燃する作品もあります。また「名誉挽回賞」というラズベリー賞ならではの部門があります。
やはり一般映画ファンの声が反映されているからこそではないでしょうか。これは「ラズベリー賞受賞」という不名誉(名誉?)の烙印を押された受賞者がその後素晴らしい作品を作り上げた時与えられる賞。
しっかりフォローも忘れないラズベリー賞。映画愛あふれる人々(会員)達に支持されている賞だという事がこんなことからもうかがい知る事ができますね。
「次はもっと面白い映画を作ってくれよ!」という世界中の映画ファンのエール、それがラズベリー賞なのかもしれませんね。
さて今年はどんな作品や俳優達がノミネートされているのでしょうか。
⚫︎主なノミネート
<ワースト作品賞>
「ファンタスティック フォー」
「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」他3作品
<ワースト男優賞>
ジョニー・デップ、ジェイミー・ドーナン 、他3名
<ワースト女優賞>
キャサリン・ハイグル、ダコタ・ジョンソン、他3名
<名誉挽回賞>
エリザベス・バンクス、M・ナイト・シャラマン、他
懐の深い演技者として株が上がったトップ女優が二人
こうして映画ファン達の絶大な支持を得るようになり信頼度も高いラズベリー賞、受賞しても知らんぷりを決め込んでいる人達も多いようですが、近年は堂々と授賞式に駆けつける受賞者達も増えてきました。中でも賞賛の声が高かった世界的スター女優が二人います。
⚫︎ハル・ベリー
2001年「チョコレート」でアカデミー主演女優賞を受賞。
その後、2004年に出演したバットマンシリーズの「キャットウーマン」がラズベリー会員に評価され(?)栄えある第25回(2004年)ラズベリー主演女優賞受賞。
オスカー像を持参し、ラズベリー賞授賞式に駆けつけ自身のアカデミー主演女優賞受賞時のスピーチをセルフパロディ。会場の観衆をおおいに沸かせたそう。
⚫︎サンドラ・ブロック
第30回(2009年)年にアカデミー賞&ラズベリー賞の主演女優賞を同時受賞。
ハル・ベリー以来、ラズベリー賞授賞式にも出席しました。彼女は授賞式に受賞作となった「ウルトラI love you」の大量のDVDと共に登場。ユニークで皮肉の効いたスピーチで彼女も観衆をおおいに沸かせたそう。
人の前に出る以上、高評価も低評価も甘んじて受け入れる…彼女たちの潔くユーモアたっぷりのパフォーマンス。筆者も益々ファンになってしまいました。
さぁ、今年は彼女達のように会場に駆けつける強者のスターは現れるのでしょうか。
アカデミー賞授賞式の前日2月27日(現地時間)の授賞式。今から楽しみですね。