店主が渾身のオリジナルデザインTを作って下さったが恥ずかしくてとても普段着にはできぬ(写真/本人提供)

 おかげさまで多くのお客様がお越し下さり、会計を見て機嫌を良くした店主が豪華な打ち上げを奢ってくれて、全員あまりの疲労に疲労感すら感じない状態でワーワーと尽きることのない中身のない話をし、だが皆このところめっきり酒も弱く食も細くなったので以前のように無茶苦茶飲むこともなく、最後は半分寝た状態で目を擦りながらじゃあねと別れたのであった。

 ってことでコスパだのタイパだのの観点で見ればあまりにも意味のない1日を過ごし、後から考えればひたすら笑えてくるわけですが、これって世界一の贅沢と思える還暦の自分を「良いトシをとった」と寿いであげたい。だってこのように無目的に集える仲間がいるということは、皆そこそこ健康で、仲間を助けるのは当然という心の余裕があるからで、それそのものを幸せと言わずして何という。

 還暦とは人生ゼロから出直すことで、「自分はどう生きたいか」を改めて考える機会でもある。時代は厳しくとも自分に囚われず、できることを一つ一つ、仲間を大切に。そういう者に私はなりたい。

AERA 2024年7月29日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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