![](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/b/b/840mw/img_bb062195425209ed3b7782e29acbb5c86794926.jpg)
日没前の入山呼びかけ
吉田ルートの登りにかかる標準的なコースタイムはおよそ6時間30分。弾丸登山者のほとんどは日没後に入山するが、これをできなくする。山小屋に宿泊予約があれば午後4時以降もゲートを通過できるが、各小屋は日没前の入山を呼び掛けており、「午後4時以降の通過はあくまで例外」(山梨県)という。また、4千人は山頂付近で人が密集して危険な状態になる目安で、昨年超えたのは5日間だった。
同時に、事前に入山予約と通行料2千円(県条例に基づく義務で今年から導入)、保全協力金1千円(任意)の決済を行えるウェブサービスもスタートした。予約できるのは1日3千人までで、3千人に満たなかった人数+1千人が当日枠となる。11日現在、7月13日(土)と20日(土)は予約枠が埋まり、14日(日)と27日(土)も残りわずかとなっている。
「弾丸登山は減るし、混雑日は吉田ルートを避けて別のルートから入山するなど一定の分散効果もあると思います。一方、山頂で御来光を見たいと考える人が減らない限り、『週末の早朝、山頂付近が大混雑』という全体像は変わりません。例えば山小屋をたつ時間で通行料を変えるダイナミック・プライシングを導入するなど、より積極的な分散策を今後検討してほしいと思っています」(佐々木さん)
また、通行予約システムには懸念もある。一度決済すると、県がゲートを封鎖した場合などを除きキャンセル・返金ができないのだ。登山は事前に計画しつつ、天候や体調に応じて柔軟に中止を決断すべきものだ。それは本来、事前に支払った2千円で左右されてはならない。ただ、佐々木さんはこう話す。
「富士山の観光地化が進み、登山者層も変わっていわゆる『登山の常識』は通用しなくなっています。『予約しているから』と無理をする登山者は必ず出てくる。無理をしないコンセンサスづくり、無理をさせない制度設計が必要です」
新施策は成功するのか。この夏の富士山に注目したい。
(ライター・川口穣)
※AERA 2024年7月22日号
![](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/1/0/120m/img_10b3b290d9c2dc53953333aed89a5aeb332493.jpg)