吉田ルート五合目で、登山客にリストバンドの提示を求める係員=2024年7月1日撮影
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 弾丸登山や混雑など危険な登山を避けるため、今年から導入された富士山登山の新ルール。一方で、このルールが無理な登山者を生むという指摘もある。AERA 2024年7月22日号より。

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 2023年夏の開山期間中、富士山に登山した人は合計22万1千人。コロナ禍前の19年比で94%まで回復した。30万人を超えていたピーク期には及ばないものの、にぎわいをほぼ取り戻したと言える。そして、今年も7月1日に山梨県側、10日に静岡県側の登山道が開通し、本格的な登山シーズンが始まった。

御来光見るため大渋滞

 富士山登山は、富士山が世界遺産の暫定リストに記載された07年ごろから活況が続いてきた。この間常に問題視されてきたのが「混雑」と「弾丸登山」だ。山岳ライターの佐々木亨さんはこう解説する。

「富士山は、シーズン全体で見ると決してオーバーユースではありません。ただ、週末やお盆時期の早朝は山頂で御来光を見るための人で大渋滞が起こります。また、山小屋に泊まるのではなく、深夜に五合目を出発して夜通し登山することを『弾丸登山』と呼んでいます」

 歩きなれた人ならば富士山は日帰りも可能だが、夜通し歩き、寒さや疲労で動けなくなる登山者は少なくない。また、昨年は不十分な装備で登る軽装登山者も多く報道された。警察庁のまとめでは、昨年7、8月の2カ月間に富士山で遭難した人は69人。全国の山で最も多かった。佐々木さんは続ける。

「弾丸登山者自体は昔から大勢いました。ただ、コロナ禍を経た去年はインバウンドの方も含め、十分な計画や装備なしに『思いつき』で登る人が少し増えたような印象は持っています」

 そんな中で今年、富士山登山者のおよそ6割が集中する山梨県側の吉田ルートで新たな施策が始まった。午後4時から翌午前3時まで五合目の登山道入り口を閉鎖して通行を規制、同時に入山者を1日最大4千人に制限するもので、「弾丸登山と過剰な混雑に対応するため」(山梨県富士山保全・観光エコシステム推進グループ)だという。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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