家宅捜索の日の夜7時過ぎ、登録されていない電話番号から私の携帯電話に着信があった。中願寺氏からだった。

「ガサ(家宅捜索)だけで、逮捕されませんでした」

 それを聞いた瞬間、ほっとした。しかし、中願寺氏の声は怒りに満ちていた。

「携帯電話やパソコンがとられてしまい、仕事ができない。なんとかパソコン1台とふだんは使用していないこの携帯電話だけは守った。鹿児島県警は『告訴・告発事件処理簿一覧表を返却せよ』としつこく言うが、今は手元にない。出さなければ逮捕するつもりだろう。メディアとして情報源は絶対に守る。だがガサまで入れば、どうにもならない。鹿児島県警の内部告発つぶしであり、メディアへの弾圧だ」
 

心臓に持病があるのに連日取り調べ

 いったんは解放された中願寺氏だが、その後も連日、鹿児島県警から福岡南署の一室に呼び出され、事情聴取を受けることになった。初日だけは雑談に応じたが、その後は黙秘を貫いた。

 一方、藤井巡査長は逮捕後の取り調べで、告訴・告発事件処理簿一覧表を流出させたことを認めていると報じられ、中願寺氏の外堀は埋められていった。

 私は中願寺氏と電話で連日話していて、声に力がなくなっていくのを感じた。中願寺氏は心臓に持病があり、今年に入って体調不良だと聞いていた。そこへ取り調べが連日続き、心臓が悲鳴をあげていた。

 中願寺氏が取り調べの合間に病院へ行くと、「24時間ホルター心電図」という器具を装着された。心拍数などのデータを日常生活の中で記録し、不整脈の有無などをチェックするものだ。当然、医師は取り調べを延期してもらうようにと忠告した。しかし、鹿児島県警は容赦なく、中願寺氏を連日呼び出し、追及を続けた。

 4月18日、夜9時前に中願寺氏から電話があった。

「今日、鹿児島県警から被疑者として取り調べることになりますと言われました。日曜日(21日)はどうでしょうといわれ、どうぞと。
 藤井さんの事件にかかわった被疑者と、はっきり言われました。日曜日に(私の)身柄がとられる可能性が高い。ただ私は4月25日に心臓の持病で診察がある。それでも日曜日だと鹿児島県警はゆずらない。事情聴取から身柄を取るでしょう。メンツにかけても。取材活動、情報源のことは答えないと最初から話していることで、かなり立腹のようだ」

 中願寺氏は観念したような声だった。

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心臓発作が起きても放置された