学校の願いやカラーが見えるような問題が出題される中学入試。具体的には、どのようなものなのか。年間500問の問題を解いてきた過去問のプロがうなった選りすぐりの3問を紹介する。AERA 2024年7月1日号より。

MENU チャック付きの袋と虫眼鏡が配布された武蔵の「お土産問題」 慶應普通部では、「解答用紙のイラストがかわいい」問題も 開成は、国語だけど”社会科の問題に見える”ようなものも

チャック付きの袋と虫眼鏡が配布された武蔵の「お土産問題」

 中学入試というと、膨大な知識を身につけて問題に対峙するというイメージが強いが、それは過去のことになりつつある。首都圏の中学・高校受験の過去問題集を出版している「声の教育社」常務取締役・後藤和浩さんは、

「2015年あたりから記述が増えたり、設問数を減らして考える時間を増やしたりするなど、思考力を問う問題が増加しました」

 と話す。

 そこで後藤さんにお願いし、最近の出題から「これは」という問題を選んでもらった。

 まずは、男子御三家のひとつ武蔵(東京)の理科の「お土産問題」から。「試験が終わったらすべて持ち帰りなさい」と指示があることからこう呼ばれ、1922年の第1回入試から出題されている同校のお家芸だ。

 ちなみに第1回入試は3枚の葉っぱの違いを述べる問題だったが、ここ数年の出題の中から後藤さんが選んだのは2018年。チャック付きの袋と虫眼鏡が配布された年だ。

 袋についているチャックは、外からは簡単に開けることができるのに内側からは開けにくくなっている。仕組みを虫眼鏡を使うなどして観察し、その理由を答えるのが問題だ。

「お土産問題は、物事をよく観察しましょうという学校からのメッセージ。こんな学校で勉強できる生徒がうらやましいですね」(後藤さん)

慶應普通部では、「解答用紙のイラストがかわいい」問題も

 同じ18年、人気校である慶應普通部(横浜市)では、理科の「解答用紙のイラストがかわいい」と話題になった。

 キリンとパンダの体の模様を描かせる問題だが、普段よく目にしているようで意外と覚えていないもの。そこには武蔵と同様に、

「受験勉強ばかりでなく、いろいろなことに興味を持って観察してほしいという学校からのメッセージが込められています」(後藤さん)

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柿崎明子
ライター 柿崎明子
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