大学入試改革の一環として、21年、センター試験に代わって大学入学共通テストが導入された。問題文に会話が引用されて長文になり、グラフや表などの資料が付記され、読解力や思考力が重視されるようになるという変化があった。後藤さんはこう話す。

「大学入試改革の影響を受けて中学入試が変わったとされていますが、実は逆なんです。大学入試が変わる前から、難関中学を中心に読解力、思考力が試される問題が出題されていました」

開成は、国語だけど”社会科の問題に見える”ようなものも

 それを表すのが、毎年150人近くの東大合格者を出す都内屈指の進学校・開成の18年の国語だ。

 長い文章にグラフと表が示され、一見すると社会の問題に見える。

 問題はカニ弁当を売り切った営業社員と、売り残した営業社員について販売部長が社長に報告する場面の描写から始まる。通常ならば売り切った営業社員が評価されそうだが、売り残した営業社員の方が社長からの評価が高かったのはなぜかを問う良問だ。営業やマーケティングの仕事に就いている保護者なら、ピンとくるかもしれない。

 しかも、ただの記述ではない。「たしかに」「しかし」「一方」「したがって」という四つの接続詞を指定された順番に文頭に使うという制約があるのだ。

「国語の読解に資料を取り入れた、先駆けとも言える問題です。完全な自由記述ではなく、展開を決めることで答えを集約させ、ロジカルな思考力を問うている。さすがです」(後藤さん)

(教育ライター・柿崎明子)

※AERA 2024年7月1日号より

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