難民受け入れに対する状況は国によって大きく異なる。2023年、現政権が積極的なカナダは約3万7千人を認定したが、日本は303人だ(写真:本人提供)
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 カナダで昨秋、日本人の女性カップルが難民と認められた。日本で生まれ育った2人はなぜ日本から逃れなければならなかったのか。G7で唯一、同性カップルに法的保障を認めていない日本に重い課題が突きつけられている。AERA 2024年6月17日号より。

【写真】ハナさんとエリさんの結婚式のブーケ

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 1951年に国連で採択された難民条約は、難民を「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために」、国籍国外にいて「国籍国の保護を受けることができない者」または「そのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」と定義する。

 2023年9月、難民としてカナダでの永住が認められたのはハナさんとエリさん。カナダ移民難民委員会は「日本での迫害に対して十分根拠がある恐怖を抱いているが、日本では十分な保護が受けられない」と認めた。

 2人にどのような迫害があったと認定し、なぜ日本では十分な保護が受けられないと判断したのか。2人の歩んできた時間を振り返ってみたい。

 50代のハナさんは関西地方で生まれた。「跡継ぎ」を望んだ祖父はハナさんが女性であったことに落胆。ハナさんは期待に応えたい思いから、祖父が亡くなるまで男の子のようにふるまった。20代になると親族からは見合い結婚をするよう求められた。男性と結婚することは想像できない。でも性的指向を打ち明ければ、保守的な考えを持つ親族や周囲はがっかりするのではないか。孤立し、精神のバランスが崩れていった。

 30歳になる直前、レズビアンの友人から近々男性と結婚すると打ち明けられた。理由を尋ねると「養ってくれる人が親から夫に代わるだけ」という。自分も結婚するしかないのか。プレッシャーから逃れるように上京して就職したが、職場では「なぜ彼氏がいないのか」「いつ結婚するのか」と聞かれるなど、複数のセクハラを受けた。

 日本は今も男女の賃金格差が大きく、非正規として働く女性も多い。「もしレズビアンであることが知られたら、異性愛者の女性より先に、まず自分が仕事を失うのではないか」。常にそんな不安がつきまとった。さらに日本のLGBTQ当事者団体ともつながったが、違和感を持つ出来事もあり、09年には自殺をはかった。

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