今では日本でも広く知られている「毒親」という言葉。これは1989年にアメリカの臨床心理セラピストであるスーザン・フォワードが、著書『毒になる親 一生苦しむ子供』の中で「子どもの人生を支配し、子どもの害悪を及ぼす親」という意味で使ったのが始まりです。皆さんの中にも、「もしかすると自分の親は毒親かもしれない」と感じたことがある人もいるかもしれません。そんな人々に今回ご紹介する書籍が、親子問題の専門カウンセラーとして活動するpocheさんが著した『もしかしてうちの親って、毒親?: 毒親育ちかもしれないと思ったら』です。
毒親のもとで育った人々の中には、今は自身が子育てをしているという人もいることでしょう。けれど同書は、自分が毒親であるかどうかを判断するためのものではありません。なぜなら同書は、今の自分が何歳でどのような立場にいるかに関係なく、「子どもの立場のあなた」に向けて書かれた本だからです。また、毒親育ちの人々は、親のことを他人に話した際に「家族なんだから親を許すべき」「過去のことは、水に流して忘れるべき」といったアドバイスされる人も多いようです。これについても、pocheさんは「この本はあなたが親を理解し許すための手引書ではありません」(同書より)ときっぱり。同書で何より伝えたいのは、「親を許せなくても、親に対する怒りや悲しみを手放すことはできる」(同書より)ということだといいます。
さて、同書の第1章「毒親育ちってどんな人?」であげられているのは、毒親のもとで育った人の5つの特徴です。また、第2章「毒親ってどんな人?」では、「過干渉の親」「愛情を道具として使う親」など毒親を7つのタイプ別に紹介。第1章・2章ともに、pocheさんがカウンセリングで見てきた事例を交えながら、詳しく説明しています。子どもが自分の育った環境が正常かどうかを判断して納得するのは難しいものです。そのためこれらの事例は自身の親が毒親かどうかを客観的に見る材料として、非常に役立つことと思います。
最終章となる第3章「毒親育ちだときづいたら」は、まさに同書の本題と言えるかもしれません。傷ついた自身の心を回復し、自分らしく生きていくにはどうすればよいかが記されています。毒親育ちの人の多くは、親の顔色を見て、親が望むことを選んできたため、子どもの頃に自分の人生を生きていないといいます。「毒」という表現の通り、「親の言葉や価値観は、長い時間をかけてあなたの心をじわじわ蝕んできた」(同書より)のであり、「今抱えている生きづらさや悩みにつながっている」(同書より)ほどに、今も大きな影響を及ぼしていることが多いようです。重要なのは親ではなく自分優先に生きること。同書では人生の優先順位をつける方法が具体的に紹介されていますので、思い当たる方は実践してみてはいかがでしょうか。
「あなたの思考も、あなたの体も、あなたの時間も、あなたのものです」(同書より)とpocheさんが記すとおり、自分の人生は自分のものであり、自分が思うように生きることになんの問題もありません。同書は、親の影響から抜け出し自分主体で生きることの大切さとその方法を優しく伝えてくれる一冊です。
[文・鷺ノ宮やよい]