パートナーからのDV被害を訴える男性が増えている。警察庁によると、警察に相談や通報をした男性は2023年に2万6175人で全体の約3割。13年に3281人(6.6%)だった男性被害者は、18年には1万5964人(20.6%)と増加傾向にある。背景には何があるのか。AERA 2024年6月10日号より。
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改正DV防止法が4月に施行された。身体的暴力以外に、言葉や態度で追い詰める「精神的な暴力」も保護命令の対象に含まれる。
「男性も身体的暴力をふるう人はかなり減りました。いま目立つのが男女ともに言葉による暴力です。精神的な暴力も保護命令の対象になったことで、互いの言動により慎重になってくれればと思うのですが……」
こう話すのは、DV加害者の更生プログラムと被害者の支援を実施しているNPO法人「ステップ」の栗原加代美理事長だ。
「男性がDV被害の相談に来るケースは増えています。一方で、加害者の更生プログラムに参加する女性も増えています」
背景に女性の社会進出
更生プログラムは男性加害者が8割、女性加害者が1割、加害者と被害者のカップルでの参加が1割という。栗原理事長は男性被害者が増えている背景に「女性の社会進出」を挙げる。
「DV加害者は体力的にも経済的にも強者である男性にかつては限定されていましたが、女性も外で働くようになり、男女の力関係が大きく変化しました。暴言を吐くし、叩くし、ものを投げるんです」
共稼ぎカップルが多くなって増えたのが、女性が男性に文句を言い募るケースだという。女性の方が収入が多い場合、「男のくせになんでもっと稼げないの」と馬鹿にする。あるいは、「なんで家事を手伝わないの。私だけにやらせて」と繰り返しなじる。男性は我慢を重ねて従うものの、ついに切れて「うるせえな」と言い返した瞬間、DV加害者に仕立てられることも。
「仕事に就かない」「不倫をした」「借金をした」といった夫のマイナス要素に直面したことがきっかけとなり、妻が「モンスター化」していくケースもある。