姜尚中(カン・サンジュン)/東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史
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 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 5月下旬に開催の方向で調整されている日中韓サミット。これに向け、プーチン大統領の訪中も含め、米中関係や東アジアにおける動きが激しく交錯しています。

 ガザでのダブルスタンダードを指摘され、米国は世界の紛争を解決していく仲介力を持っているのかと疑問符がつきつつあります。中国はその間隙を縫って、フランスとの関係を持つなど積極的な外交をしています。

 中ロ首脳会談で驚いたのは、習近平とプーチンが向き合って議論する映像です。プーチンの右側には予想通り、ラブロフ外相がいましたが、左側にいたのはショイグ前国防相でした。日本では長年国防相を務めてきたショイグがまるで失脚したように言われていましたが、そのショイグはプーチンの左側にいたわけです。ショイグは、ロシア安全保障会議の書記になり、その後釜は経済政策を担当してきたベロウソフ第1副首相です。

 戦時期の一番の問題は、戦時経済における国民経済の逼迫です。軍事的にはある程度目途がついたロシアは、今後の持久戦に備えての戦時経済の準備をしていて、ポストウクライナ戦争をにらんで、NATOと長期戦に入るために戦時経済を運用していくフェーズに入っているのかもしれません。

 中国とロシアの間には37兆円もの貿易額があります。中国は、たとえ米国から制裁を受けたとしても、ロシアからのエネルギーが確保できるというのは最大の強みです。一方、ロシアは、中国の高度なAIや半導体を必要としています。米国は、中ロ関係に楔を打ち込み、お互いを競わせながら、基本的には中国を取り込んでいくという戦略のはずでした。今回の中ロ首脳会談で見えてきたことは、中ロ関係に楔を打ち込んできた米国の両国に対する外交政策は失敗したのではないかということです。

 今、中国外交はフル回転で動いています。5年ぶりに人民解放軍の幹部が自衛隊との交流を行うなど、見方を変えれば日本懐柔に向かっています。日本はいつまでも米国と一体化だけでいいのか。しっかりと冷静に見て二枚腰、三枚腰で、国の安全というものを考えていかなければなりません。

AERA 2024年6月3日号

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姜尚中

姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

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