5月13日、「つばさの党」根本良輔・同党幹事長の自宅から看板などを押収する警視庁の捜査員ら

 女性秘書の自殺が報じられた参政党には「秘書の自殺問題に答えろ」「代表の女癖が悪い、逃げるな」と粘着する。

 5人との不倫が報じられ、離婚した元妻から提訴された乙武洋匡さんには「不倫はダメだぜヘイヘイヘイ」とふざける。

 百田尚樹さんらが率いる日本保守党には「日本を壊した安倍晋三を崇拝して、保守とか言っちゃってる。頭悪すぎ」と一蹴し、「アメリカの犬、イスラエルの犬。中東を戦争で火の海にしたイスラエルの戦争責任について答えろ」と得意げな調子で吠える。

 そしてそんな彼らに対しても対話を拒まないれいわ新選組代表の山本太郎さんに対しては、「お前ほんとに喋るの得意やな」と拡声器ごしに答え、さらに彼らに向き合おうとする山本さんに「洗脳をするな!」と叫ぶのであった。

 彼らのYouTubeチャンネルで流れてきた「洗脳するな!」に、つい声をあげて笑ってしまい、ハッとする。これでは確かにYouTubeチャンネルの視聴者数を稼げるだろう……というか、私も加担してしまっているではないか! そしてそんな彼らの声を「小気味よい」と思ってしまう私も、私の中にはいるのである。私の中のゲスが、彼らの声を面白がっている。この国の政治にはとっくに芯も真もなく、金と欲でどろどろと汚く溶解し、右も左もリベラルだろうが大差なく、自分たちの組織の保身しか考えてないんじゃないのか、結局は結局は……という政治に対する深い諦めに「不倫はダメだぜヘイヘイヘイ」くらいの暴力的おふざけで癒やされるという心理状況に、私自身が落ちてしまっているのである。

 私は今回、東京15区の有権者じゃなくて本当によかったと思っていた。今の時点でも入れたい候補者がいないからだ。この国の有権者として国政の投票権を無駄にするなんてあり得ないと思って生きてきたが、それでも今、私は入れたい政党も入れたい候補者もいない。今回の補選の投票率はあまりに低かったが、それはもしかしたら私のように「自分の声を代弁してくれる政治家がいない」という諦めからの棄権、という意思表示でもあったのではないか。

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末期的状況が生んだ悲喜劇