この「銀行詐欺」の罪の他に、もうひとつの罪が今回明らかになった。それが「米税務署に虚偽の確定申告をしたこと」だ。

 合意文書によれば、水原氏は2024年の2月1日ごろ「2022年の個人所得税申告のためのタックスリターン」を米国税務署(IRS、内国歳入庁)にファイル(申告)している。

 アメリカ国内での所得がある人ほぼ全員に義務づけられるこの確定申告は、「虚偽の申告をした場合、罰を受けることを理解している」という欄に署名をしなければ、ファイルすることができないしくみだ。

 水原氏は2022年1年間の所得を13万6865ドル(約2100万円)だと申告しているが「実際の所得はこの数字よりはるかに上だったことを被告は認識していた」と同文書に書かれている。

 さらに驚くべきことに、「既婚」の水原氏は、本来ならば5000ドルの控除を受ける身だったにもかかわらず、自らを「独身」と偽って申告し、1万ドルの控除を受けていたことも明らかになった。

 独身だと偽っていたということは、会計士などに依頼せず、自分でパソコンに打ち込んで申告したということかもしれない。

 また、大谷選手の口座を使った不正送金スキームによってその年に騙し取っていた「410万ドル」(約6億3900万円)の所得を申告していなかったことも水原氏は認めている。

 この虚偽申告によって発生する追徴金(利子と罰金は含まれていない)は1,149,400ドル(約1億8千万円)だと記されている。

 量刑は「銀行詐欺」が最長で禁錮30年、そして「虚偽の確定申告」が最長で禁錮3年だ。水原氏がすでに有罪を認める司法取引に合意していることや、犯罪歴がないことなどを裁判官が考慮して、どこまで刑期が短くなるかが、今後の注目点だろう。

 また、合意文書には「米国市民でない場合は、国外退去を命じられ、将来、米国市民になることも、再びアメリカに入国することも認められないはず」という内容の表記がある。もし国外退去が命じられるとすれば、タイミングはいつなのだろうか。

 司法取引に詳しい、ニューヨーク州の元連邦検事補のジョシュア・ナフタリス氏は「水原の場合は、米国で刑期を終えてから、国外退去を命じられるだろう」と分析する。

 幼少の頃からアメリカで育った水原氏が、米国籍を取得していなかったと初めて知って驚く米国人は多い。

 これまでバイリンガルであることを武器に米国で移民として生きてきた水原氏。重罪の刑期を終える頃には、一体、どこでどう生きていくのだろうか。

(ジャーナリスト・長野美穂)

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