米司法省がネットに発表した合意文書の一部。水原容疑者の直筆の署名がある

 日本のような国民皆健康保険がないアメリカでは、歯科治療費は高額になり得る。さらに、アメリカでは医療保険と歯科保険は別々に購入しなければならないため、月々の保険料がかさんでしまう。

 ちなみに、エンゼルス球団の求人広告を見ると、フルタイム勤務の人材募集には「医療保険、歯科保険、眼科保険完備」と書かれている。

 通常、企業の正社員の場合、保険は勤務先の企業が契約している保険会社のものを利用できるため、当時エンゼルス球団に雇われていた水原氏も、エンゼルス球団が契約している歯科保険を使えた可能性がある。

 歯科保険は、PPOやHMOなど、どの種類を選ぶかで月々の保険料の支払いが異なる。また、歯科保険会社の独自ネットワーク以外の歯科医にかかれば、保険でカバーされる割合はぐっと少なくなり、自腹で払う分が増えるしくみだ。

 また、歯科保険には年間に使える上限の金額が設定されており、例えば「年間5千ドルを超えた場合の治療費は全額、患者もち」などという縛りがある。

 さらに、歯科保険会社が「この治療は必要ない」と判断した場合は、治療費がカバーされないこともあり、保険会社と患者の交渉バトルは日常茶飯事だ。

 よって、ネットワーク外の歯科医師を選んで、一気に多くの歯を集中的に治療してもらい、保険会社が認めなかった治療法を含んでいる場合などは、930万円という高額な請求書が来ることもあり得る。

 すでに銀行Aの大谷選手のチェッキング口座の登録連絡先を自分の電話番号とメールアドレスに変更していた水原氏だが、この合意文書では「銀行Aに自分で合計24回ほど電話をして、そのたびに、自分は大谷選手だと名乗っていた」と記されている。

 24回というのは、驚愕の回数だ。

 電話で大谷選手になりすますことが、すでに日常と化していたとも言える。

 さらに合意文書によると、大谷選手が水原氏によって盗まれた「16,975,010ドル」(約26.5億円)を全額、大谷選手に賠償することを水原氏は受け入れたという。

 刑務所の中で服役しながら、一体どうやってそんな大金を工面できるのだろうか。

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明らかになったもう一つの罪