<インタビュー>ジョン・ボン・ジョヴィが語るバンドの現在と日本との深いつながり、『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』ができるまで
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 40周年を迎えたボン・ジョヴィにとって初となる公式ドキュメンタリー作品『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』が、2024年4月26日からディズニープラスの「スター」にて独占配信開始する。1984年のデビュー以降、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”を制した「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」や「バッド・メディシン」、YouTubeのミュージック・ビデオ再生数が13億回以上を記録する「イッツ・マイ・ライフ」など、数々のヒット曲を送り出し、アルバム・チャート“Billboard 200”では6作が首位に輝いているボン・ジョヴィは、言うまでもなく世界的ロックバンドで、これまでの全世界売り上げは1億3千万枚を超える。2018年には晴れて【ロックの殿堂】入りを果たした。

 時代とともに進化しながらも、その軸はブレることなく唯一無二のキャリアを築いてきた彼らだが、その輝かしい成功の裏では多方面からのプレッシャー、メンバー間の確執、そして近年ではフロントマンであるジョン・ボン・ジョヴィの声帯の不調など、様々な苦難と向き合ってきた。これらにも踏み込んだ『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』の配信に先駆けて、Billboard JAPANは、ジョンと監督のゴッサム・チョプラから話を聞くことができた。

 バンドの40年もの歴史を4話に凝縮した、野心的なプロジェクトを製作することになった経緯について、「最初の40年間を振り返る機会なんて、めったにないよね?」と2年以上前から構想していたことを明かしたジョンは、「自分の手元にあった素材をすべてアーカイブ化する予定で、バンドメンバーたちにも貢献するようお願いするつもりだった。40周年が近づいていたから、振り返るのに値するだろうと思ってね」と明かした。

 今作を製作するにあたって唯一会った監督だったというゴッサムについて、ジョンは「彼が手がけた元クォーターバックのトム・ブレイディのドキュメンタリー『トム・ブレイディ:アリーナの男』という作品が大好きで、彼と仕事をするというアイディアが気に入った」と述べると、「この映画を作り始める前に集めたアーカイブをゴッサムに渡した際、僕は自分の健康と新作のソングライティングにも目を向けていた。配信と同じ時期に、ニュー・アルバム『フォーエヴァー』をリリースできたらと思ってね。すでにみんなが聞いてくれていたら嬉しいけど、先行配信中のシングル『レジェンダリー』がヒットしている。これらはすべてお祝いの一環なんだ」と話した。

 ドキュメンタリーの見どころの一つは、スタジアム級のロックバンドとして長年世界中のファンの魅了してきたボン・ジョヴィの駆け出しの頃の貴重なライブ映像をはじめ、当時まだソビエト連邦だった1989年に出演した【モスクワ・ミュージック・ピース・フェスティバル】から2022年に行った最新の全米ツアーまで、時代を象徴するパフォーマンスの数々だ。そんな中、今作でジョンが最も思い出深いライブの一つだったと話すのが、バンドにとって初来日となった1984年のロック・フェスティバル【SUPER ROCK '84 IN JAPAN】だ。

「ボン・ジョヴィと日本の長年のつながり、僕たちが最初に海外でブレイクしたのが日本だということは、みんなも知っていると思う。信じられないような思い出が蘇ってくる。僕の日本への愛、プロモーターだったウドー、レコード会社、大勢のファンたち、そして日本の様々な場所での思い出。ボブ・ディランやジョニ・ミッチェルと出演したフェスやバンドメンバーとのツアー……エッグ(東京ドーム)やあらゆる会場で何回演奏したことか。日本には、特にたくさんの思い出があるね。」

 さらには、ボン・ジョヴィの貴重な未発表音源、6月発売のアルバム『フォーエヴァー』に収録される楽曲が形になっていく様子も収められている。リッチー・サンボラ(元ギタリスト)とともに故ロビン・ウィリアムスの映画のために書き下ろしたという未発表曲「Cadillac Man」について、ジョンは「日本であの曲を演奏している様子が含まれていたと思うけど、レコーディングには至らなかった。そういう曲がアーカイブから30~40曲見つかって、いずれストリーミング・サービスですべて聞けるようになる予定だ」と明かしてくれた。最新作『フォーエヴァー』に関しては、「過去20年間で僕たちが作った中で最高のレコードだ。『レジェンダリー』は素晴らしい曲だけど、アルバムにはもっと素晴らしい曲が収録されていることを約束するよ」と期待感を抱かせた。

 今作では、ジョンがここ数年間苦しんできた声帯の問題、その結果として2022年に行った手術とリハビリによる肉体的・精神的な負担についても包み隠さずに触れられている。「これをドキュメンタリーに含めたのは、ゴッサムのアイディアと言っていいと思う。彼はリアルタイムでこの状況を見ていて、それを映像に収めていった。虚栄心を満たす作品を作るのではなく、ただ真実を伝えたい。僕の声帯の問題は真実の大部分だからね」と、ジョンは単刀直入に語る。

 これに対し、ゴッサムは「ジョンと彼の声の現状に関するパートは、どのようなリスクがあるかを視聴者に伝えています。このパートのおかげで、視聴者は切迫感と親しみやすさをより感じられるようになったと思います。ロックスターであることは楽しいけれど、特に親近感が湧くことではないですよね。誰かがある種の葛藤を経験するのを見ると、親近感が持てますし、そうすることで単に40周年を回顧する以上の何かが生まれると思ったんです」と説明した。

 ゴッサムはまた、唯一後悔があるとすれば、1994年に脱退した創設メンバーのアレック・ジョン・サッチ(ベース)にインタビューできなかったことだと話した。「なぜなら誰もが喜んでインタビューに応じてくれたからです。ただ、(アレックは)健康状態があまり良くなかったと思うので、間に合いませんでした。インタビューできる機会があったかもわかりませんが、バンドの歴史を語る上で欠けている唯一の人物だと言えます」と話した。アレックは、2022年6月5日に70歳で逝去した。

 ミュージシャンを目指していた10代のジョンの地元のヒーローで、ボン・ジョヴィを結成前から知るブルース・スプリングスティーンもインタビューに応じている。「ブルースとサウスサイド・ジョニーは、幼い頃の僕に大きな影響を与えたし、彼らの音楽が大好きだった」とジョンは振り返り、「彼らは大体、東京から横浜ぐらいの距離の30マイルほどの場所にいた。そして不可能を可能にしてくれたんだ。(米ニュージャージー州の)アズベリー・パークのバーに行けば、(ジ・アズベリー・)ジュークスのメンバー10人とEストリート・バンドのメンバー7人の誰かに会える可能性があって、手の届かない存在ではなかった」と説明。「サウスサイドは、僕がバンドを結成するずっと前に僕の最初のデモをプロデュースしてくれた。ブルースとは、僕がデヴィッド(・ラッシュバウム)と高校時代にカバーバンドを組んでいた時に、一緒にステージに上がった思い出がある。大人になってからもずっと交流は続いているよ」と話すジョンがブルースとドライブに繰り出す姿もドキュメンタリー内で描かれている。

 ジョンの声帯回復への懸念が残る中、ドキュメンタリーはタイトルにもなっている「Thank You, Goodnight」という言葉で終わる。だが、今後のボン・ジョヴィの活動へ希望を持てる内容でもある。

 「不透明な部分は確かにあるけれど、はっきりさせておきたいのは、手術から22か月が経った今、『レジェンダリー』を聞いてもらったらわかるように、僕は歌うことができるということ。実は今、僕らはニュージャージーにいて、進捗を確認しようと、明日から二晩リハーサルするんだ。明日の3時間、その次の夜の3時間は、何の問題もなく歌えると思う。一晩で2時間半歌うのを週に4回、26週間近くできるようになれば、準備はできたと言えるだろうね」というジョンの言葉からも、少しずつではあるが完全復活へ着々と進んでいることは明らかだ。再び彼らが大きな会場でヒットナンバーを奏でるその日を楽しみにしたい。


◎作品情報
『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』(全4話)
2024年4月26日(金)より、ディズニープラス「スター」で独占配信スタート
出演:ジョン・ボン・ジョヴィ、リッチー・サンボラ、デヴィッド・ブライアン、ティコ・トーレス、アレック・ジョン・サッチ、ヒュー・マクドナルド、フィル・X
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◎リリース情報
アルバム『フォーエヴァー』
2024/6/7 RELEASE
※日本盤詳細は後日発表