「極」のメインターゲットは国内外の富裕層などだという。
前述の通り、既にカセットコンロで国内シェア85%を占めているため、販売戦略の一環としてこれまでにない新たな需要層獲得を視野に入れた、ということらしい。遠藤さんは言う。
「海外にもカセットコンロのメーカーはありますので、そのなかでも目に引くように、当社ならではの技術やデザインの粋を極めました」
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志さんは、「名前通り、『究極』のカセットコンロを作ろうという岩谷産業の意気込みを感じる」と話す。
「高くてもいいモノであれば、買う」という消費者マインドをベースに開発に踏み切ったのではないか、ともみている。
高くてもいいモノにお金を出すというトレンドが社会に広がってきた一つのきっかけとして、「バルミューダが高級家電を出し始めたことが影響しているのではないか」と安蔵さんは指摘する。
たとえば、同社が2010年に発売した高級扇風機「GreenFan」だ。価格は3万5千円。扇風機としては破格の値段だが、これが大当たり。その後も同社は、15年に「BALMUDA The Toaster」を2万5千円で販売し、こちらも大ヒット商品となった。
「こういった流れをバルミューダが作り、その後、コロナ禍が来て家にいる時間が増えたことで、『高くてもいいモノは買う』という消費者マインドが醸成されていったのだと思います。『極』もこういったトレンドをベースにしているのではないでしょうか」
さらに、安蔵さんは「デザイン性に振り切っているのもおもしろい」と話す。
「一般的な家電メーカーだと、デザインを重視はしても、機能性を優先して追求することが多い。しかし、『極』はデザイン性にこそ重点を置いているように見えます。こういった発想は、家電メーカーではない岩谷産業だからこそできたのではないかと思います」
現在は一時品切れ中の「極」。再販は4月末頃を予定しているという。
もしも「極」で煮炊きをする日が来るのなら、記者は水炊きを合わせたい。食材もこだわり、肉は薩摩地鶏、薬味に大分県産の柚子胡椒。高価な土鍋も買わないと雰囲気が出ないだろうか、……叶わぬ妄想が止まらない。
(AERA dot.編集部・唐澤俊介)