タイ紀伊國屋書店バンコク店の「鬼滅の刃」コーナー(写真:紀伊國屋書店提供)

「ただ、日本のメディアミックスの手法は、ガラパゴス的に成長しているので、輸出が難しいのです」

 アニメ化や映画化するとき、出版社、テレビ局などが資金を出し合って製作委員会を作り、生み出された作品を基に各社が得意とする分野で利益を得る。

「ただ、製作委員会は複数の会社が集まった組合に過ぎません。法人ではないので、銀行から資金を借りることはできませんからコンテンツ制作への投資は小規模にとどまりやすく、権利関係が複雑です。大きな市場を狙うことに最適化していません」

 つまり、漫画やアニメは輸出産業としての「産業化」ができていないという。森さんの提案は、作品ごとに「法人化」することだ。

「会社が作品に関するすべての版権を持っていれば、交渉がスムーズに進みます」

 実際に、海外では作品ごとに法人化するケースがあるという。

「法人化すると法人税が課されるなどの課題が生じますが、韓国では特例で税負担を軽減する仕組みを作っています」

 漫画は日本が誇る文化であり、経済を牽引する一大産業だ。(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年4月8日号より抜粋