AERA 2024年4月8日号より

 ただ、21年度の日本の出版コンテンツの海外売り上げは2792億円。ゲームの海外売り上げ2.8兆円、アニメの1.3兆円に比べると、まだ小さい。

「以前、大手出版社の担当者に取材したところ、現状は漫画の売り上げは日本国内の方が多いが、このまま順調に海外市場が伸長すると、10年後には日本と海外の売り上げは5:5になる可能性があるということでした。海外市場は北米、東アジア、フランスの販売占有が高く、人口の多いインドや中南米にも視野を広げています」

 実際に、海外展開は続々と進んでいる。

 3月、ドラゴンボールのテーマパークが、サウジアラビアで建設されると発表された。KADOKAWAは1月、フランス語圏市場向けに漫画やライトノベルを翻訳出版する合弁会社の設立に合意した。トルコでは講談社の漫画『リミット』を原作にしたドラマが製作され、今年配信された。

 漫画のライバルは、韓国の「Webtoon(ウェブトゥーン)」だ。縦スクロールでサクサク読めるのが特徴で、5年後の市場規模は4兆円になるともいわれる。

「縦スクロール漫画はここ数年、出版業界内外から参入が相次いでいます。基本右開きでコマを追う従来の日本の漫画より、縦スクロール作品の方が外国人には読みやすいという意見もあり、世界展開を見据えて強化する社が多いです。漫画の新しい表現方法の一つとして定着していくのか、今後も動向が注目されます」

輸出産業として産業化

 PwCコンサルティングは今年2月、国内のメディアミックスの経済波及効果を発表した。漫画を制作、販売する市場規模は1.4兆円で、広告や菓子など他産業を含めると経済波及効果は2.7兆円に上ると推計した。同社戦略コンサルティング部門パートナーの森祐治さんは言う。

「漫画は制作の原資が小さいうえに流通を通さずに電子書籍などで広げることもできます。さらに、キャラクターグッズなどの市場が広く、非常に誘発効果が高い産業です」

 同社のレポートによると、原作となった漫画の国内の他業界への影響力を算出したところ、「ドラゴンボール」は原作の販売額の7.95倍、「鬼滅の刃」は5.12倍だった。

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