作家は山谷に1年間通い、ボランティアに参加して聞き取りを重ねたという。作品では、高齢化する住民たちの波乱万丈悲喜交々(こもごも)の物語が、まるで絵本のようなカラフルな色彩で綴られていく。声高な政治的主張はない。しかしそこに、芸術の森と貧民街が隣接する東京という都市への鋭い批判があることは明らかだ。
現代美術に限らず、近年は文化やスポーツと政治の関係にみな敏感になった。クリエイターが政治的な意思表明をするのも当たり前になった。
それ自体は歓迎すべきことだが、意思表明だけならだれでもできる。個人的には、美術でしか表現できない繊細な政治性を求めたい。弓指の作品はそれを考えるヒントになる。
※AERA 2024年4月1日号
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