大川智宏(おおかわ・ともひろ)/智剣・OskarグループCEO兼主席ストラテジスト。野村総合研究所、UBS証券などを経て現職に(写真:本人提供)
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  バブル期に当時の史上最高値をつけた際、日経平均を構成する225社のPER(株価収益率)平均値は60倍に達していた。PERとは、株価が利益予想の何倍に達しているのかを示す指標だ。その倍率が高いほど、株価は割高になっていると判断できる。

 現在の日経平均PERは4万円を突破した時点でも17倍弱にすぎなかった。だから、過熱感はうかがえないと説く声も聞かれるが、そうやって平均値で捉えるのは危ういと指摘するのが大川智宏さんだ。

「同指数採用銘柄が全般的に買われているわけではなく、半導体と円安を切り口に、一部の大型外需株に物色が集中しています。今後、さらに上昇したとしても、せいぜい4万1千円が上限でしょう」

 生成AI特需で業績が絶好調の米国エヌビディアはともかく、「国内の半導体関連は明らかに過大評価されすぎで、PERが50倍や80倍に達している銘柄もある」(大川さん)。為替相場についても、いっそうの円安が進むことは考えがたいという。

「遅かれ早かれ、米国の金融政策は利下げに転じる見通しですし、いずれは日本もマイナス金利の解消に踏み切る可能性があります。こうして日米の金利差が縮小すれば、むしろ徐々に円高方向へと向かっていくと考えるのが自然」

 大きな転換点となりうるのは、4月下旬から5月中旬にかけて相次ぐ3月期末企業の本決算発表だ。同時に翌期の業績予想も明らかになるが、企業側としてはなかなか強気の数字を掲げにくいという。

「決算発表が出そろう頃から調整局面を迎え、年末頃に3万5千円付近まで下落していても不思議はありません」

 調整とは、株価が適正水準へ収斂すること。年初の水準こそ、225社の実力値か?

(金融ジャーナリスト・大西洋平)

AERA 2024年3月25日号