<ライブレポート>テミン(SHINee)の甘美で魅惑的な音楽芸術に浸る【METAMORPH in Japan】初日

 テミン(SHINee)が、2024年3月8日~10日に、東京・日本武道館でソロコンサート【TAEMIN SOLO CONCERT : METAMORPH in Japan】を開催した。ライブの聖地にソロで立つのは2017年に開催した自身初の来日コンサート以来。思い出の場所でアップデートした姿を披露する貴重な機会を一目見ようと、立見客も続出した初日の様子をお伝えする。

 変化や変質(metamorphosis)を連想させる本公演では闇の部分や秘めたる部分が描かれていく。コツコツと忍び寄る足音、叫び声が特徴的な「Guess Who」に合わせて、綺麗なパールアクアグリーンの光景が広がり、会場が暗転すると、心臓音のようなボワボワっとした音と、何かが覚醒し暴れだしそうな映像が流れた。

 そしてスクリーンが中央から開くと、正方形のリフトの上に立つテミンの姿が。キャップを目深にかぶり、最新韓国ミニアルバム『Guilty』から「The Rizzness」で幕を開けた。ドープなヒップホップに余裕さがなじんだパフォーマンスで、本公演の目玉であるテミンの逆さ吊りが早くも会場を熱くさせる。リフトがゆっくりと前方に90度、180度へと傾いていくのだが、体幹がしっかりしているのだろう、テミンのボーカルが揺らぐことはなかった。その威容たるや、まさにテミンのカリスマ性が体現された瞬間だった。

 キャップを取り、ようやく顔を見せたテミンは次に「Advice」へ。青い照明のもと、ダンサーと緩急つけたダンスを披露。瞳だけで伝わるものも大いにあった。『Guilty』発表から現在までのテミンの代名詞とも呼べる腹部のチラ見せが多くの視線を集めたのも否めない。

 続く「Black Rose」は、静と動、しなやかさと激しさが入り混じったパフォーマンスで、観客は食い入るように息をひそめていたのだが、「Criminal」は歓声の嵐に。両の手首をくくる白い布を口で剥ぎ取り、ジャケットのファスナーを全開、すれ違いざまにダンサーがそれをめくり、最後にはテミンが勢いよく脱ぎ、床に叩きつけるという大胆な展開の連続に面食らった。数週間前に東京ドームで見た、何万ものライトスティックを高速で回転させる遊びをし、年上メンバー2人だけが盛り上がるダンスチャレンジについていけず口を尖らせていた人と同一人物とは思えなかった。

 恥ずかしそうにシャツのボタンを締めながら、「みんなー! もっと声出して!」とこの日の主役が呼びかけると、彼の名前を呼ぶ声でいっぱいに。「僕が初めてコンサートをしたのが、ここ武道館でした。僕にとって意味のある場所で、いつかまた皆さんとここで会いたいと思っていたので嬉しいです」と満面の笑みを浮かべると、“おかえり”と拍手が広がっていく。この日のために、『Guilty』の収録曲はもちろん、「みんなが好きな曲をたくさん」準備したという。

 慣れないひとりMCにちょっぴりドギマギするテミンは、早速次のパートへ。怪しげなサウンドと妖艶な振り付けが絶妙にマッチした「Impressionable」から、リフトの傾斜とプロジェクションを利用しながら気持ちの高鳴りをセクシーに表現した「Heaven」、エレキギターとビートに音数を減らし、艶めかしい視線を送ることで前曲とは対照的にアンホーリーな雰囲気を醸し出した「Strings」、ノスタルジーとメランコリーが共存した「Not Over You」まで、大人モード全開のテミンが届けられた。

 「She Loves Me, She Loves Me Not」「Light」で音域の広さとダンサーとの息の合った踊りを見せた後は、人気曲「Famous」を日本語で届け、日本公演ならではの見せ場を作っていく。“イ・テミン”コールが自然発生した「WANT」ではステップで強弱をつけながら、最後までオーディエンスを惹きつけた。勢いそのままに、ダンスポップの「Danger」では銃に見立てて手をこちらに向けて撃つサービスまで。客席の掛け声もバッチリだ。

 ステージチェンジ後のパフォーマンスも見物だった。日本語歌唱の「DOOR」は、なんと宙づりの状態からスタート。全身赤色の衣装に赤いレースで目隠ししたテミンは時間をかけながら起き上がり、白いダンサーたちとの美しい対比も見せる。そして、禁断の扉を開けたあとは、大本命の「Guilty」へ。もがくように頭を大きく振り、勢いよく薄い服の中に手を入れて襟元から出す(そして腹筋が露わになる)という、センセーションを起こしたダンスが生披露されると会場のボルテージは最高潮に。何かが憑依したのか、はたまた覚醒したのか、明らかにそれまでとは違うキャラクターになっていた。

 その別人格は「MOVE」でも健在。妖艶味が増した表情と声色を使い分けた歌唱、内に秘めた欲望を体現するスロウな動きは視覚と聴覚を刺激し、会場にいる者全員を飲み込んだ。

 会場中から叫ばれる自身の名前を耳にして「今日は静かな雰囲気なのかと思っていたんですけど、なんだ違った~」と、魔法が解けたように、チャーミングなテミンに元通り。「こういう姿を見せることができて嬉しいです。これからもずっと幸せな思い出を作っていきたいと思います。皆さんの笑顔が好きです! ずっと笑顔でいてください。約束~!」と嬉しい言葉もたくさんくれた。

 実は「She Loves Me~」の前にジャケットとアームカバーを着用する予定だったのだが「今日は本当に緊張していて忘れちゃって……ずっと『どうしよう!』ってパニックだったんです(笑)。今日だけの特別なライブになりましたね!」と言われなければ誰も気づかなかったこと、初めての武道館公演で360度どこからでも見られるように円形センターステージを使用した際に「(誰にも気づかれないままステージに立つために)箱に入って、スタッフに運んでもらったんです」という暴露エピソードで笑いを誘った。

 最新ミニアルバムの終盤を彩る「Night Away」と「Blue」は彼の美声に酔いしれる素敵な時間に。特に後者は、客席が濃い青色の光の海に変わり、彼が求めていたもの、見たかった景色はこれだったのかと感動。大人モードや憑依したテミンも最高だったが、この美しいひとときは何度でも味わいたいと思わせるものだった。

 本編が終わると、“イ・テミン大好き”コールが会場に響く。ビジュー付きスーツで姿を現したテミンは、アップダウンが激しい「IDEA:理想」でアンコールをスタート。ドラマチックな展開に共鳴するように雷や炎、レーザーライトがステージを彩った。

 さきほどの愛のこもったコールは、ちゃんと本人にも届いていたようで「僕も皆さんが大好きです。本当です!」とそれぞれの思いが重なり合った。

「今日はいろいろなことを感じた日になりました。久しぶりのソロコンサートで緊張してしまって……いいものを見せたいという欲が大きくなると逆に間違えてしまうことがあるんです。でも、皆さんは変わらず僕を愛してくれて、応援もしてくれて。それが僕の力になるんです。もらった愛情に恩返しできるように頑張りたいんですけど、僕はまだまだ子供みたいな姿で……でも、皆さんは僕が成長する姿を見守るのが好きじゃないですか。僕は欲張りなので、皆さんとずっと一緒にいたいですし、愛されたいです。(2月24日・25日の)SHINeeの東京ドーム公演で胸いっぱいになって泣いちゃいましたけど、僕たちの気持ちと皆さんの気持ちはお互い伝わっていると思います。言葉にできない感情を感じさせてくれて本当にありがとうございます。この感情は永遠に忘れないです!」

 SHINeeとテミンの思いは心配せずともシャヲルに届いているが、歌にのせて改めて伝えるべく、テミンが準備したのは「世界で一番愛した人」。感極まって言葉に詰まるテミンに代わって、オーディエンスがフォローするシーンも見られ、二人三脚で歌が完成した。「I Think It’s Love」はテミンが丁寧に言葉を伝えていく渾身のバラードで、紙吹雪が舞う中、今にも涙がこぼれ落ちそうな表情を浮かべるテミンを見て、感涙する観客が続出。そしてラストナンバー「Identity」でテミンはあふれ出る感情を繊細に、そして最大限に響かせる。白い光の扉が中央に向かって閉じはじめ、〈Woo, yeah, woo〉とさえずりながら、テミンはその中に消えていった。

 テミンというひとりの表現者の心の中を奥底まで覗いたような今回のライブで、シャヲルたちは彼の変わらない芸術的探求心をはっきりと認識したはずだ。次のフェーズではどんな姿を見せてくれるのか。欲張りテミンと公言するだけあって、まだまだ見せていない別の顔を、あっと驚く形で見せてくれることだろう。


Text by Mariko Ikitake
Photo by 河村美貴(田中聖太郎写真事務所)

◎セットリスト
【TAEMIN SOLO CONCERT : METAMORPH in Japan】
※2024年3月8日(金)公演
1. The Rizzness
2. Advice
3. Black Rose
4. Criminal
5. Impressionable
6. Heaven
7. Strings
8. Not Over You
9. She Loves Me, She Loves Me Not
10. Light
11. Famous
12. WANT
13. Danger
14. DOOR
15. Guilty
16. MOVE
17. Night Away
18. Blue
19. IDEA:理想
20. 世界で一番愛した人
21. I Think It’s Love
22. Identity