坂井市役所 移住定住推進課 兼企画政策課 ふるさと納税推進室 主査 小玉悠太郎(こだま・ゆうたろう)/1991年、福井県坂井市生まれ。金沢大学を卒業後、2013年に入庁。16年に企画情報課に配属。ふるさと納税や移住促進業務などに従事。23年から移住定住推進課を兼務しインナーブランディングや公式キャラクターを担当(撮影/写真映像部・東川哲也)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年3月11日号には坂井市役所 移住定住推進課兼企画政策課 ふるさと納税推進室 主査 小玉悠太郎さんが登場した。

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 人口減を食い止めようと、移住者の募集に注力する自治体は多い。住宅や雇用に対する支援を積極的にアピールし地方への移住を後押しする。

 移住ばかりがクローズアップされがちだが、地域に定住してもらえる施策を打ち出すのも行政の仕事だ。自分たちが暮らす地域の魅力を認識することで地域への愛着を持ってもらうプロジェクトを提案し、進めている。

 今年度、福井県坂井市の魅力を言語化するブランディング推進事業を手がけた。参加したのは坂井市に暮らす高校生や大学生など計40人。地元の魅力についてワークショップ形式で語り合った。

 初回は、坂井市の魅力を1人20個ずつリストアップしてもらい、「ヒト」「モノ」など九つのジャンルごとにまとめた。「20個となると最後の方はなかなか浮かばなくなります。そこから考え抜いて出てきた魅力が知る人ぞ知るという感じで面白いんです」

 計約800個の魅力からもっと深掘りしたい「ヒト」や「モノ」を選び出し、実際に巡ってみるフィールドワークも実施した。「たとえば竹田地区のキャンプ場の管理人さんが面白いらしいから会いにいってみようっていう具合です。地元の人でも知らないことばっかりで、大好評でした」

 市民の投票も経て、ブランドメッセージは「らしさ、かがやく。」に決まった。坂井市には自分らしさを大切にして、生き生きと暮らしている人が多い──。そういった参加者の率直な感想が表現に込められている。

 坂井市の良さについて考え始めたのは、入庁4年目でふるさと納税の担当になってからだった。特産品を製造する企業を取材するうちに、地元の底力を肌で感じるようになった。

「坂井市には何もないという人もいるが、それは違う。何でもある。ただ、価値が言語化されていないだけだと気づいたんです」

 ブランドメッセージから派生したロゴマークや公式キャラクターもできあがった。これらを旗印に、次年度は「らしさ」を輝かせている人たちを多くの若者に紹介していく事業を展開したい考えだ。

「若者が集まり、地元のことを知る機会をどんどん作っていきたい。少なくとも魅力を知らないまま都会に出ていく若者は減らせるはずです」

(ライター・浴野朝香)

AERA 2024年3月11日号