
1日放送の「酒のツマミになる話」(フジテレビ・毎週金曜午後9時58分~)のゲストに、ダンサーのアオイヤマダ、ラランド・サーヤ、柔道家の野村忠宏、俳優の渡辺裕太が登場。ゲストのひとり、アオイヤマダはオリンピックでのパフォーマンスの直後、SNSでの誹謗中傷に悩まされていたことを明かす。そんな秘話の結末には“ツマミ”では聞けない美しいエピソードがあると話題だ。アオイヤマダの過去の記事を振り返る。(「AERA dot.」2022年12月3日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)
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一つだけ確信していることがある。出会いこそが人生である、と──。東京2020オリンピック閉会式でソロパフォーマンスを披露し、世界中の人々を魅了したアオイヤマダさん。表現者として大切にしていることとは。
2020年秋のある日──。KAAT神奈川芸術劇場のチケット売り場には、「星の王子さま」の当日券を求める人たちで、長蛇の列ができていた。サン=テグジュペリの最も有名な小説の珠玉の言葉を、音楽とダンスで表現するという試みは、評判が評判を呼び、(コロナ対策のために席数を半分に減らしながらも)3階席まである大空間が連日、満員の観客で埋めつくされた。コンテンポラリーダンスの舞台としては異例の出来事だった。その伝説の舞台で、王子を演じたのが彼女だった。
「3年近く前に、作品の演出・振り付け・出演を務めた森山開次さんから『一緒にやりませんか?』と声をかけていただきました。その時点では、どんな作品になるのかイメージはできなかったのですが、森山さんの活動を追っていくうちに、私自身も『こういう表現を目指していきたいな』と感銘を受けたことも多くて……。自分の可能性を広げるためにも、挑戦することに決めたんです」
とはいえ、いざ稽古が始まってみると、尊敬する先輩たちに囲まれての王子役ということもあり、プレッシャーに押しつぶされそうにもなった。
「緊張しすぎて、当時はご飯を食べられなくなったこともあったし、プレッシャーのあまり吐いてしまうなんてことも初めて経験しました。何日も続く公演の中で、同じことを繰り返すのもほぼ初めての経験で。私は王子としてステージで泣いたり笑ったり、いろんな喜怒哀楽の表現をするのですが、『お客さんは退屈していないかなぁ』とかすぐ心配になっちゃう。王子として感情を入れすぎて、本当に悲しくなって泣いていると、次の瞬間は嬉しくなるみたいな、その感情の変化を1週間続けていたら、最後は自分の感情が売り切れて、空っぽになったみたいな感覚も味わいました」