全員英語が話せるTravis Japanのなかでも飛び抜けて高い能力を持ち、海外でのインタビュー応答や交渉、ナレーションなどを一手に担う川島如恵留。だが、実は学生時代から英語が得意だったわけではないという。どのように英語力を身につけたのかを訊いた。
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「英語がいかに大切かって、また学びましたね」
1月、アメリカの人気公開オーディション番組「America's Got Talent(AGT)」の出場者から視聴者投票で40組が選ばれて出場する「Fantasy League」の舞台に立ったTravis Japan。ステージでのパフォーマンスはもちろん、代表して川島如恵留が交わした審査員との英語でのやりとりも、2022年の出場時よりも格段に進化していた。
英語力が伸びた実感を問うと「あります」と笑った。「少しまた幹が太くなったというか、葉っぱの数が増えた感じがしていますね」
22年の7カ月のアメリカ武者修行中ならばともかく、デビューして多忙な現在、日本にいながら英語力を伸ばすのは並大抵のことではないはずだが、「帰国後は、いわゆるパーソナルトレーニングで勉強を続けています」と言う。「いつでも連絡を取れるネイティブの先生がいてくれて。最近は、YouTubeで英語のナレーションを録ったことで、あ、自分がいま身につけたい英語ってこれだな、って明確にわかったので、英語でナレーションを上手く読む練習などをしていますね」
英語への障壁が消えて
容姿から誤解を受けがちだが、高い英語力は、川島が努力して身につけたものにほかならない。
「純日本人っぽくないと英語が話せて当然という目で見られがちっていうのは、ある意味、僕も感じて生きてきました。如恵留(のえる)って名前もあって、ハーフですか、ってよく訊かれますから」
曾祖父(そうそふ)がオランダ人のいわゆる「ワンエイス(1/8)」ではあるものの、当然ながら、自宅で英語が飛び交うような環境ではなかった。
「ちゃんと中1からスタートです。みなさんと一緒ですね。英語なんてもう、高校1年生までいちばん下のクラスだったくらいで(笑)、全然好きじゃなかったし、そんなにできたわけでもなかったし」
そこからいつどのように英語力を身につけたのかと尋ねると、「語学でよく言われるのは、その言語を話す友達をつくること、って言うけど……それがいちばん難しいって話じゃないですか」とちゃめっけたっぷりに笑ってから、「僕の基礎、いちばん最初に僕が自分でした英語の勉強って、じつはディズニーなんです。そこで初めて、英語って楽しい、ってマインドになれたんですよね」と明かしてくれた。
「大学1年生のときに、『Frozen』、日本でいう『アナと雪の女王』という作品にハマって。映画館にも3回観に行って、DVDもサウンドトラックも出たらすぐ買って。自分でも英語の歌詞で歌えるようになりたいって思って練習したんです。
DVDを観て、最初は、映画館と同じ、字幕が日本語の状態で英語を聴いて。よくわかんないな、と思いながらも、何度も観ていれば、内容が全部頭に入ってくる。このシーンのこのセリフって覚えられるぐらいまで繰り返し観たんです。そのあと、字幕を英語にして英語音声で聴いて、あ、この単語知らないなとか、耳ではこう聴こえるけど、どういう意味なんだろうっていう言葉を調べて、最終的には字幕なしで観るようにした。そうしているうちに、話とか歌が耳にすんなり入ってくるようになった、って感じなんですよ」
聴いた言葉を真似て口に出す、シャドーイングも行った。
「当時はそういう勉強法があることは知らなかったけど、結果的にシャドーイングになっていたんです(笑)。次のシーンでこのセリフが来るってわかっているから、『聴いた・言う』じゃなくて、DVDと同時発声することになるんですよ。まだ発音とかはあまり意識していなかったけど、英語で、台本みたいに完璧に覚えている状態でした」
それがきっかけで「心のなかの英語への障壁がなくなって」、「レ・ミゼラブル」や「グレイテスト・ショーマン」、「ラ・ラ・ランド」といったDVDを購入。さまざまな時代やタイプの英語に触れていったという。
いまから改めて英語の勉強を始めてみようという人にも、この方法は「本当にいちばん手っ取り早いと思います」と勧める。
「できれば実写で観たほうがいいかなとは思うんですけど、実写だと、例えばちょっとセリフがリダクションされていたり、聴き取りづらいこともある。子ども向けのCGアニメーションは、声が完璧な状態で録られているから、そういう意味では、入り口にするのは悪くないんじゃないかなと思いますね」
(編集部・伏見美雪)
※AERA 2024年3月4日号より抜粋