瀬尾まなほさんと瀬戸内寂聴さん(瀬尾さん提供)
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 作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの秘書を約10年務めた、瀬尾まなほさん(35)。【前編】では、寂聴さんが亡くなった現実の受け止め方や、疲弊した瀬尾さんを救ってくれた周囲の人の言葉などを聞いた。【中編】では、政治家の細川護熙さんとのエピソードや寂聴さんが晩年に苦しみながらも「書くこと」にこだわり続けた理由などを語ってくれた。

【写真】瀬尾さんの長男のイラストを描く寂聴さん

【前編】<瀬尾まなほさんが今だから語れる“瀬戸内寂聴さんがいない現実” 「いまだ悲しみと正面から向き合えていない」>より続く

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 瀬尾さんは、寂聴さんのことになると本当に楽しそうに話す。彼女の思う寂聴さんの魅力とはどういったものなのだろうか。

「天真らんまんな少女のような人なんです。私はそこが一番好きでした。かわいいんですよ、本当に。あとは、人間らしいところも好きでしたね。よく人の悪口も言いますし、何かあったら私のせいにするし、そのときは『こんちくしょう』って思うんですけど(笑)、でも、それが人間らしかったんです」

 瀬尾さんは、「先生は自分が好きだなって思う人が来ると、態度が明らかに変わるんです」と笑う。政治家の細川護熙さんが、2014年の東京都知事選へ出馬する際に、寂聴さんに応援をお願いしに来たときのことだ。

「それまで瀬戸内は政治には関わらないと言っていました。恩師の今東光さんが政治家になったときに、実際は意見が通らず、難しいとご本人からも聞いていました。なので、このときも当然断るものと思っていたんです。でも、二つ返事で受けてしまったんですよ。私としては『え!? 言ってたことと違うじゃん』って(笑)。もちろん『反原発』といった主張に共感していたこともあったと思いますが、単純に『好き』という気持ちが強かったんだと思います。一度決めたらそこからは行動力がすごくて、移動費も宿泊費も自腹で東京に行って、極寒の2月に外で演説をしたりしていました。こちらは振り回されて大変でしたけど、見ていて思わず笑ってしまいましたね。先生らしいなって」

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書くことが本当に好きだった