TikTokから音源を引き上げたユニバーサル・ミュージックのスタンスへの米音楽業界の反応とは?

 世界最大の音楽会社であるユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)が、現地時間2024年1月30日に所属アーティストとソングライターに向けて公開書簡を発表し、報酬、人工知能(AI)、権利を侵害する作品、ハラスメントをめぐる意見の相違により、同社の音楽が間もなくTikTokから離れると宣言した。

 TikTokは数時間後に回答し、UMGの書簡を“虚偽のナラティブ(物語)”と呼び、「(UMGが)アーティストやソングライターの利益よりも自分たちの欲を優先したことは悲しく、残念だ」と反論した。このショート・ビデオ・プラットフォームは、UMGのアーティストにとって重要な“無料プロモーション”と“発見”のツールとして機能していると指摘した。

 2月1日までに、UMGがリリースした楽曲の多くがTikTokから削除され、TikTok Billboard Top 50チャートの21曲に影響を与えた。UMGは同日、TikTokの音楽ライセンスに関する見解が“ひどく時代遅れ”だとする声明を発表した。「TikTokは、有害なAIとプラットフォームの安全性に関して我々が提起した他の問題に対処しようともしなかった」と声明は続いた。他の音楽企業や団体も独自の声明を発表し、この話題に拍車をかけている。

 NMPA(全米音楽出版社協会)のデヴィッド・イスラエライト社長兼CEOは、「音楽はTikTokの成功の原動力であり、TikTokがそのビジネスを支えている音楽クリエイターを大切にしていないように見えるのは非常に残念だ。我々は、ソングライターが公平に評価され、補償されるべきであり、人工知能が人間の創造性の価値を薄めるために使われるべきではないと確信している。他のソーシャル・メディア・プラットフォームが、プロモーションを公正な報酬の代わりにすべきだと主張する間違いを犯しているのを見てきた。それは負ける議論であり、間違っている」とコメントした。

 プライマリー・ウェイヴの創設者でCEOのラリー・メステルは、「TikTokが、アーティストに“プロモーション”を提供するという理由で、故意にアーティストへの報酬を過小に支払うことを合理化しようとする考え方は、何十年も前の作り話であり、現代の音楽ビジネスでは通用しない。アーティストやソングライターは、その仕事に対して適切な報酬を受け、非倫理的なAIの使用から保護されなければならない。以上だ。このプラットフォームの成長と文化的意義にとって重要なソングライターやアーティストに適切な報酬を支払い、保護するようTikTokに求めてきたUMGやアーティスト擁護団体とともに立ち向かえることを誇りに思う」とコメントした。

 アーティスト・ライツ・アライアンスは、 「TikTokがアーティストに公正な報酬を支払わず、責任を持ってAIを使用していないことは許されない。ミュージシャンが自分たちの作品の使用料やルールを決める際に発言力を必要とする理由のもう一つの例だ」と述べている。

 ダウンタウン・ミュージック・ホールディングスのアンドリュー・バーグマンCEOは、「ダウンタウン(・ミュージック・ホールディングス)では、アーティスト、ソングライター、権利者が創作活動に対して公平に補償されるよう努力している。ここ数年、TikTokというプラットフォームは急成長を遂げたが、(公平な補償をする努力は)していなかった。音楽業界とTikTokのパートナーシップを再調整し、帳尻を合わせる時が来た」とコメントしている。

 ヒプノシス(Hipgnosis)のメルク・マーキュリアディス会長は、「ヒプノシスは当初から、ソングライターが経済方程式のどこに位置するかを変える必要があるという事実を大々的に提唱してきた。TikTokはより高いレートを支払うべきか?もちろんだ。すべてのデジタル音楽とソーシャル・メディア・サービスは音楽の価値を認識しなければならない。TikTokは、音楽の消費において善の力となる能力を持っている。ユニバーサルは、我々のビジネスにおける“900ポンドのゴリラ”が、音楽の権利所有者だけでなく、特にソングライターの最善の利益となるような基調を定めていることを確認するという観点から、ここでは正しいことをした」と述べた。

 ナッシュビル・ソングライターズ・アソシエーション・インターナショナルのエグゼクティブ・ディレクター、バート・ハービソンは、「NSAIは、ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)がデジタル音楽プラットフォームであるTikTokに対し、彼らが大量の利益を得ている音楽のクリエイターに対して、より高い公正な市場料金を支払うことに同意するまで、(UMGの)管理下にある著作権をライセンスしないという立場を取ったことを支持する」とコメント。そして、「さらに、TikTokは生成系人工知能(AI)企業に投資しており、彼らのAIが作成した音楽で自社のプラットフォームを氾濫させ、人間のソングライターやアーティストへの支払いを薄めようとしているように見える。彼らは同時に、他社が同意しているAI(問題に対する)保護の実行にも難色を示している。また、TikTokプラットフォームにはより強力なセキュリティー・プロトコルが導入されるべきだという懸念もある。本日、NSAI理事会は、出席理事20名全員の一致により、TikTokに対し公正な料金交渉と、人間のクリエイティブ報酬に影響を与えるAI問題への対応、特に未成年のユーザーに対するセキュリティ対策の強化を求める」と述べた。

 アメリカン・アソシエーション・オブ・インディペンデント・ミュージック会長兼CEOのリチャード・バージェス博士は、「A2IMは、TikTokからカタログを撤退させるというUMGの戦略的決定を支持する。この決定は、音楽業界における差し迫った問題、すなわち、マーケティングとプロモーションのためにデジタル・プラットフォームを活用することと、公正な報酬を得る切実な必要性との間の微妙なバランスを浮き彫りにするものだ。この動きは、露出と発見性の必要性か、アーティストのキャリアとそのキャリアに資金を提供するレーベルの存続を支える音源からの絶対不可欠な収入源を優先させることか、という音楽ビジネスにおける長年の難問を前面に押し出している」と述べている。

 さらに、「音楽は、TikTok(旧Musical.ly)のようなプラットフォームを構築し、普及させるための基盤であり、その成長とユーザー・エンゲージメントに大きく貢献してきた。しかし、音楽業界によるこの投資は、公平な経済的利益で報われていない。テクノロジー業界は体系的にアーティストやレーベルへの支払いを低く抑えてきたが、TikTokの支払い方法は他に類を見ないほど不利だ。音楽業界にとっての愚行は、プロモーションや露出、発見しやすさのために、音源から得られる本質的な収益を犠牲にすることにある。アーティストがより多くのオーディエンスにリーチするために、マーケティングやプロモーションの手段が必要であることは否定できないが、現在のモデルは、これらのプラットフォームの成長を促進する重要な部分である音楽の収益化が不十分であることによって、アーティストのキャリアやレーベルの財政的な持続可能性を損なっている」

 「UMGのカタログの削除は、この価値交換を見直す緊急の必要性を痛感させるものだ。それは、音源からの収入を損なわない、よりバランスの取れたアプローチの必要性を浮き彫りにしている。アーティストとレーベルの存続には、安定した収益が不可欠だ。UMGの動きが変化のきっかけとなり、プラットフォームの成功に対する音楽の実質的な貢献を認めつつ、効果的なマーケティングやプロモーション活動のためにこれらのスペースを活用する、より公平な報酬モデルが提唱されることを願うばかりだ」

 「音楽業界とテクノロジー・プラットフォームとの関わり方を見直す時期に来ている。音源から得られる重要な収益を、マーケティングや販促ツールが損なわないような、持続可能な均衡を目指そう。私たちは100年以上もの間、無料の音源からラジオが利益を得ることを許してきたし、42年前のMTVでもその過ちを繰り返した。不毛の土地に種をまくのはやめよう。アーティストやレーベルがTikTokから受け取る収益は微々たるもので、彼らの生活を維持するには不十分だ。音楽の本質的な価値が認められるようなシステムを提唱し、プラットフォームがその成功の原動力となり、巨大企業を築き上げた音楽の役割を反映した公正な料金を支払うようにしなければならない」

 「これは、音楽業界におけるより公平な慣行への転換点なのだろうか?音楽クリエイターに名声と金銭の二者択一を迫ることのない持続可能な経済モデルの必要性が浮き彫りになったことは確かだ。アーティストのキャリアの発展と長寿、そして彼らを支えるレーベルの健全性にとって、クリエイターの中産階級を支えるのに十分な音源収入は不可欠である。そのような再調整は、クリエイターがデジタル・プラットフォームのために創造した価値に対して公正に補償される、より持続可能で豊かな音楽エコシステムにつながるだろう」とバージェス博士は述べている。