※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 むし歯などで歯を削った後にかぶせるクラウンや詰め物などの補綴物(ほてつぶつ)。これらは歯ぎしりで壊れることがあるのでしょうか? そもそも天然歯も歯ぎしりがひどいと、割れたりすることはあるのでしょうか? 歯ぎしりによる歯や補綴物への影響について、若林歯科医院院長の若林健史歯科医師に聞きました。

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 歯ぎしりをしているとき、歯には体重の何倍もの力がかかっているといわれます。歯ぎしりの習慣があるかどうかは、歯を見るとわかります。奥歯が削られ、すり減って、歯の溝がなくなってくるからです。中には溝がなくほぼ平らな状態になり、前歯も半分くらいになっている人がいます。ギシギシと相当に激しく歯をこすりあわせているのでしょう。

若林歯科医院院長の若林健史歯科医師

 歯ぎしりは軽い人を含めると、ほぼすべての人にあるといわれています。また、日中、無意識に歯をかみしめてしまったり、くいしばったりすることもあるので、多かれ少なかれ、年とともに歯はすり減っていきます。すり減りが見られない、きれいな歯の人は逆に上下の歯でかめていないということであり、それはそれで問題です。

 ただし、天然の歯はとてもじょうぶで、何十年と使い続けてもすり減るだけで、割れることは少ないです。唯一、むし歯などで神経を抜いてしまった歯は割れやすいですが、これは歯に酸素や栄養を補給していた毛細血管も、取り除かれてしまっているためです。栄養のいかなくなった歯は枯れ木のように、もろく割れやすくなっているのです。一方、人工物である補綴物の多くは、割れるリスクがあるので注意が必要です。

 補綴物とは歯を修復するときに使用する歯科材料で、詰め物とかぶせもの(クラウン)が代表的です。詰め物は比較的軽度のむし歯で歯を削った後に、詰める修復物。かぶせものはむし歯が進行し、神経の治療で歯を大きく削ったときに使用します。

 詰め物は壊れても安価で再治療ができますが、かぶせものは高価なものも多いので、壊れるリスクやその場合の補償について、よく知っておいたほうがいいでしょう。

 かぶせものにはいくつかの種類があり、材料やどの部分に使用するかによって、保険診療の対象になるものと、ならないもの(つまり自費診療)があります。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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