「mandate」は”死語”に

「正式にトランプが共和党の候補になれば、バイデンの支持率も上昇し、両者が競ってくるでしょう。勝率は五分五分だと思います。どちらが大統領になってもおかしくありません」

 つまり、「もしトラ」どころか、「またトラ」は、十分起こりえるということだ。

 激戦州の結果のカギは、「戸別訪問」だと前嶋さんは言う。

「両党が狙っているのは、約4割いるとされる無党派層です。中でも3分の1が二大政党のどちらにも寄っていない、本当の意味での無党派と言われています」

 この層にいかに効果的にアプローチするかが重要だという。

「両党は莫大な資金を使い、購買行動や年収などの消費者データや、過去の選挙行動のデータなどのビッグデータを活用しています。たとえば、共和党は『5回中1回しか投票をしたことがなく、ハンティングマガジンなどを買っているライフル愛好者の白人』を見つけて、戸別訪問をかける、といった作戦を取るでしょう。有権者を細分化して、ひたすら回るどぶ板選挙で、激戦6州は決まることになると思います」

 アメリカでは分断が進んでいる。前嶋氏は、「今のアメリカでは『国民の大統領』が生まれなくなった」と話す。

「1988年のジョージ・ブッシュ、96年のビル・クリントンあたりが最後だと思います。『mandate』(信託)という言葉が使われなくなりましたね。民主党や共和党への『mandate』はありますが、国民全体から大統領への『mandate』はなくなった。分断と拮抗がここまで進んだアメリカは近年ない。この傾向は、数年は続くと思います」

(AERA dot.編集部・唐澤俊介)

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