粗大ゴミ置き場で拾ったコレクション第1号の柱時計。(写真/北原照久)
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 隔週刊「トミカ歴代名車COLLECTION」は、タカラトミーが厳選した歴代名車を、その詳細を解説したマガジンとともにお届けするシリーズ。スポーツカーからはたらく車まで、毎号付いてくるトミカはオリジナルデザインで、これを集めると、唯一無二のトミカ・コレクションが完成する。

 2週間に一度の発売日には、マガジン巻末に収録されるリレーコラム「My car, My mini car」をAERAdot.にも配信。2月6日発売の19号のコラムは、ブリキのおもちゃ博物館の北原照久館長による「おもちゃ史を紡ぐコレクション」だ。

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 僕のコレクター人生の始まりは、学生時代にスキー留学で訪れたオーストリアのインスブルックでホームステイをしていた時、ヨーロッパの人たちの「先祖代々使われてきた物を大切にする文化」に触れたことでした。帰 国後、粗大ゴミ置き場で拾った柱時計がコレクション第1号です。

 ほどなくして、インテリア雑誌『私の部屋』に掲載されていた、ブリキのおもちゃがズラリと並んだ部屋の写真に出逢います。一目見ただけで子供時代の記憶が瞬時に蘇り、鳥肌が立ちました。その部屋の主が、僕のブリキおもちゃの師匠・矢野雅幸さん。早々に会いに行き、収集の極意などを教わりました。

 狙い目は、昔から営業している町のおもちゃ屋さんで、棚の一番上や下で埃を被っている英語のパッケージ。当時の輸出の花形だったクルマやロボットなどのブリキのおもちゃは、英語表記のものがほとんどで、日本語のパッケージが作られることは少なかったようです。蒐集初心者の僕は、時間が合えば必ず矢野さんと一緒におもちゃ探しに出かけるようになりました。

 子供の頃に遊んだブリキのおもちゃと次々に再会し、懐かしさだけでなく、形やメカの面白さ、そしてポップな色調に興奮し、その魅力にすっかり取り憑かれてしまいました。

 当時、ブリキのおもちゃに注目している人はほとんどいなかったので、町のおもちゃ屋さんの店の奥や倉庫の中で、ひっそりと埃をかぶったまま眠っていたのです。

「あの町」「この町」とまだ見ぬおもちゃたちを求めて足を伸ばしているうちに行動範囲はどんどん広がり、そのうちに動物の嗅覚みたいな独特の〝感〟も養われ、普通なら直進する交差点をなんとなく曲がりたくなり、そしてなんの根拠もなく曲がった先におもちゃ屋さんがある――という経験を何度もしました。

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ブリキのおもちゃコレクション第1号は…