「エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論」を刊行した(撮影/写真映像部・上田泰世)

ヤバいコピーをもっとハードに

 仕事は「流れ作業」という叶井さんだが、名だたるB級映画をあの手この手で世間に認知させるパワーは毎回、並大抵ではない。

 昨年出版した対談集『エンドロール』に登場した映画評論家の江戸木純氏は、〈日本の映画の興行歴史に、カナイ映画っていうのがひとつのジャンルとして残るんじゃないか〉と評した。江戸木氏はこうも言う。

〈普通の会社ではそんなにハードなコピーって出せないんですよ。でもあなた(叶井さん)の場合は、「それ、やり過ぎでは?」っていうヤバいコピーを、もっとハードにって押してくるからね〉

 手がける映画に過剰に思い入れを持たないからこそ、できることなのかもしれない。

「でも、『ムカデ人間』は個人的に好きなんで見ました。去年12月に『東京国際叶井俊太郎映画祭』というのをやってもらったんだけど、そこでもともとモノクロで公開された『ムカデ人間2』のカラー版が上映されて、それは見た。すごかったね、カラー版はやばいよ」

ハリウッドの新作情報は「見たくない」

映画愛を語る叶井さん。「面白い映画とは、終わってほしくないと思える映画」(撮影/写真映像部・上田泰世)

 手がける映画にはクールな視線を持ちつつ、映画には強い愛情を抱く。

「面白い映画というのは、終わってほしくないと思える映画。もっと続け、と思う映画が面白い。『復讐もの』は面白いですね。いまはしがないオヤジだけど、実は昔強くて、昔の技を思い出して戦うって設定がいいね。『エイリアン』シリーズも好きで、今年新作がアメリカで公開されるから、それは見たいなと思ってる。もう、ハリウッドの新作情報とか見たくないんですよ。はやく死にたいって言ってるのに、どうしても見たくなっちゃうから」

 映画にずっと携わってきた叶井さんだが、いまの映画業界に甘い見方はしていない。

「映画配給会社には、いま全然夢がないからね。いまはネット配信のほうがいいですよ。

『映画館で見ること』が、映画の魅力だと思っている。自分はそれが好きだからずっと映画をやってるけど、若い人たちは映画館でなくてもいいですからね。配給会社は、大手しか残らなくなるんじゃないでしょうか。配信でもいいものはいい。配信の作品が劇場先行で流れたりする、そういう形でいいんじゃないかな」

今も声の張りは変わらず。「無理してるんだよ」という(撮影/写真映像部・上田泰世)

(朝日新聞社・福井洋平)

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