梅雨の晴れ間ではありますが、この週末から暑い日が続くようになりましたね。
「三伏(さんぷく)」とは、陰陽五行説において、夏至以降の三つの庚(かのえ)の日の総称です。
一般的に夏至後、三回め「庚(かのえ)の日」を初伏(しょふく)、四回目を中伏(ちゅうふく)、立秋後の最初の庚の日を末伏(まっぷく)とした総称を言います。(地域や流派により数え方が異なります)
さて、そんな「三伏(さんぷく)」とはどのような歳時記なのでしょうか…。
「庚の日」…金と火は仲が悪い?
陰陽五行説は、季節を「木火土金水」で表します。木は春、火は夏、土は土用、金は秋、水は冬となります。その中で、お互いに相性のよい組み合わせとそうでない組み合わせがあります。
三伏の由来となる季節は夏、庚は火に属します。火は金を溶かす(火性の最も盛んな夏の時期の庚の日は凶)…そこで、夏の間の3回の庚の日を三伏として、種まき(新しいこと)や旅行・縁談などは慎むようにと言われています。
三伏の日は流派により異なりますが、最も一般的なのが夏至以後の3回目・4回目と立秋以後の最初の庚の日をそれぞれ初伏・中伏・末伏とされています。
冷たいものがほしい夏…三伏には温かいものを
暑さが増すとつい、冷たいものを求めてしまうのは人情です。でも、そればかりでは体が悲鳴をあげてしまいますね。
韓国では、三伏の日にサムゲタン、ユッケジャンなどを食べる習慣があるそうです。夏場の強壮食品とされています。
サムゲタンは、消化の良い鶏肉を使っていること、香辛料と野菜を一緒にとれることなど、胃に優しい食事と言えます。
初伏が梅雨明け前、次伏がちょうど梅雨明け頃、末伏が立秋後というのもそれぞれ季節の変わり目であり、体を労わる節目になりますね。
この時期は室内の冷房により、知らず知らずに体が冷えてしまいがちです。温かい食事も適宜取り入れたいものです。
俳句やお便りにも使いたい言葉
三伏の時期は7月中旬から8月上旬であることから、「三伏の候」「三伏の猛暑」と手紙や葉書の前文に書くなど、時候を表す言葉として用いられていました。最近ではあまり見かけなくなってしまいましたが、俳句の季語としても活躍していた言葉です。
鈴木真砂女の句に『三伏や提げて重たき油鍋(さんぷくやさげておもたきあぶらなべ)』があります。
油鍋という言葉、今のフライパンに相当するのではと思いますが、当時は鉄鍋だったでしょう。重いと思ったら三伏だわ…という、女性ならではの夏の辛さがほの見える句ですね。今も夏の台所は暑くてかないませんが…。
また、暑中見舞いの冒頭に「三伏の候…」と記せば、ご存知の方には「あぁ、そうだ…」と思いを新たに、ご存知ない方にも「三伏って何?」と久しぶりの会話のきっかけになるかもしれません。
《参考文献・サイト》
俳句歳時記・夏 角川文庫
春夏秋冬を楽しむくらし歳時記 成美堂出版
国立天文台暦計算室