
もうひとり50代のソフトウェアエンジニアの石原安浩さんの「たまむすび」との出会いはコロナが流行してから。リモートワーク中のランチ時、偶然radikoで出合ったのが始まりだった。
「赤江さんが自宅から電話で出演していて、ディレクターからのファクスを待っているのに届かないと言っていた。と、スタジオから『赤江さんが電話使っているから、今ファクス送れないよ』との声が。爆笑したのを覚えています」
赤江とパートナー陣との会話が心地よく、毎晩寝る前にベッドで聞く。
「魅力ですか? とくに有益な情報があるわけでもなく(笑)。寝落ちするような番組なのに、気がつけば毎日聞かずにはいられなくなり、去年の武道館イベントにも、わざわざ名古屋から夫婦で参加しているんですよね」
番組を例えるとすると、通勤電車の中から毎朝見ている小学校。名前も知らない学校ながら、校庭で遊んでいたり、運動会の練習をしていたり。そんな子どもたちの様子を見るのが楽しみになった。
「今の時代、身の回りには、『ほら、役に立つでしょ?』という情報であふれている。でも、『たまむすび』という番組は、ただ存在しているだけで毎日心に小さなカイロを入れているような感じ。推しを推すのともちょっと違うんですよね」
よく言われるように、聞き終わったら内容をキレイさっぱり忘れるような番組ではあるものの、その存在に大きな意味があったことを、あらためて感じているという。
最初は何かの冗談かと思ったのに、本当だったことを知って驚いたという終了の告知。
「終了ロスを乗り越えるのはなかなか難しい。数年ぐらいは、録音した過去番組や武道館のDVDを見返していると思う」
そうして、いさぎよく消えていく番組たち。週刊朝日も、すぐ行きます。(福光恵)
※週刊朝日 2023年4月7日号より抜粋