最有力はドジャース?

 これまでも大谷の移籍先について、「ドジャースで決まり」などといった様々な臆測が報じられてきた。念頭に置かなくてはならないのは、これらは大谷本人が求めていそうな条件などからの推測に過ぎないということだ。肝心の大谷は、自身の去就について、ほぼ何も語ってはいない。それを踏まえた上で、有力候補として挙げられている球団を見ていこう。

 優勝を狙える戦力と、大谷に相応しい給料を支払える豊富な資金力は、絶対条件だと見られている。加えて、多くの識者が、日本に近く、気候が温暖でファンの気質も穏やかな西海岸を大谷は好んでいると考えている。というのも、17年にメジャー移籍した際に、大谷が候補に絞り込んだ7球団のうち5球団が西海岸だったからだ。

 最有力と目されるのが、エンゼルスのご近所さんであるロサンゼルス・ドジャースだ。13年から23年までの11シーズンで10回の地区優勝を果たしている強豪で、20年には32年ぶりにワールドシリーズを制覇した。野茂英雄、黒田博樹、前田健太、ダルビッシュ有など、日本人選手とのつながりも深い。「ヒリヒリするような9月を過ごしたい」と勝利に飢える大谷にとって、ドジャースの戦力は申し分ない。

 ドジャースは、大谷の高校卒業時とメジャー移籍時にも獲得を狙っていた。昨年のオフには、大谷獲得に備えて補強を控えたとすら言われる。

 スポーツメディア「ジ・アスレチック」が現役選手に行ったアンケートでは、「大谷翔平は来季、どのチームでプレーしているか」という質問に対して、6割近くが「ドジャース」と回答。ドジャースファンと話していると、大谷獲得は確実かのような自信さえ感じる。

残留もゼロではない

 しかし、あまりに条件的に整いすぎているがゆえに、ドジャースは選ばないのではないかとの声もある。

「誰もがドジャースに行くと思っています」と「ジ・アスレチック」のエンゼルス番記者を務めるサム・ブラムは言う。「でも私としては、あまりに理にかないすぎた選択肢であるがゆえに、大谷は選ばないんじゃないかと感じています。大谷は、自分の力でチームを勝たせたいと考える人間です。頭の切れる大谷は、ドジャースで優勝しても、自分が理由で勝ったとは思えないのではないでしょうか」

 確かに、大谷は勝って当たり前のチームで優勝することは望まないように思う。高校卒業後に直接メジャーに行く道を希望したり、前例のない二刀流に挑戦したりと、人とは違う道を選んできた。反骨精神が大谷の原動力の一つなのかもしれない。(在米ジャーナリスト・志村朋哉)

AERA 2023年11月20日号より抜粋

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