パソコン、スマホなどの各種モバイルを使ったコミュニケーションが当たり前となった現代。
そんななか、最近めっきり長文の文章や手紙を書かなくなったなぁ……という人も多いでしょう。
そうはいっても漢字に触れない日はないでしょうし、メールなどでも漢字を使用しなければ伝えたいことはきちんと伝わりません。
そもそも、私たちが親しんでいる漢字はどのようにできたのでしょうか……。
その歴史を少しだけひもといてみましょう。
紀元前1500年前に誕生した漢字「甲骨文字」
「漢字」は「漢語(中国古代語)」を書き記すために作られた文字です。
おおよそ紀元前1500年前、つまり約3500年前の中国、「殷(商)」という王朝で生まれ、当時の文字は「甲骨文字」と呼ばれます。
この「甲骨文字」が現在考えられている「最古の漢字」なのですが、いったいどんなふうに使われていたのでしょう。
約3500年前、殷王朝では神の意志を占うことですべてが決められていました。
他国と戦争していいか……
今年は順調に雨が降るだろうか……
王は明日狩りに出かけるべきかどうか……
日常にかかわることすべてが、亀の腹側の甲羅や牛の骨などを使った占いで決められたのです。
骨の裏から火のついた棒などを押し当てると、骨の表側に割れ目ができます。この割れ目の形を、吉または凶と判断したと考えられており、その占いの内容は、骨の表側に刀で刻みつけられました。
つまりこれが「甲骨文字」とされ、20世紀になって中国河南省安陽市の遺跡から発見されました。
10億人以上の人たちが使用する漢字の生命力
甲骨文字の中には絵文字のようなものもありますが、現在の漢字と同じ構造(へんとつくりの関係など)をしているものも多く存在しています。したがって、現在の漢字の知識で読むことのできる甲骨文字もあります。
そして、漢字は古代日本にももたらされました。日本人は日本語を表現するための文字として漢字を使い、ひらがなやカタカナを生み出しました。
東南アジアでも中国系の人々は漢字を使いますし、10億人以上の人たちが今も漢字を使っていることになります。
こう考えると、漢字は古代から生き続ける生き物のようでもあり、そのたくましい生命力には驚かされます。
ハイテク産業と古代の文字
この「甲骨文字」がさまざまに変化して、現在とほぼ同じ姿(いわゆる楷書)になったのが、おおよそ3世紀ごろ。
つまり、甲骨文字ができてからじっくり約1700年の年月をかけ漢字は現在のような姿になったのです。
さらに、非常に画数の多い複雑な形状が多いにもかかわらず、ここ数十年においてはデジタル化の波を見事に乗り越え、コンピュータに表示できるまでに変化してきたことになります。
ところで、アメリカの世界最大級のIT企業「オラクル」(Oracle Corporation)は「神の予言、神託」といった意味であることをご存じでしたか?
ちなみに「甲骨文字」は英語で「ORACLE BONE SCRIPT」と表記されます。そして、「Oracle Corporation」の中国語表記は「甲骨文」。
この関係性だけを見ても、ハイテク産業と古代の文字の接点は興味深いところですね。