大宮:なるほど。
松本:私自身もお寺出身じゃないからこそ、娑婆(社会)と、娑婆から閉ざされたお寺世界を結ぶ架け橋になりたい意識があって。架け橋になるには、もっと娑婆側のことに長(た)けてなきゃと思い、インドにMBA(経営学修士)を取りに行きました。
大宮:すごい! それをどう活用したんです?
松本:架け橋になりたいと思っているわけだから、企業で働いている人たちが一体何を考えて、どういう発想で、どんなモチベーションでそこにいるのか「言語」を学んだっていうことが大きかった。で、それを知るからこそ、ビジネス言語を話している人たちにとって、仏教っていうものがどんな意味があり得るのかを、翻訳できるようになるわけです。
大宮:そうか! 素晴らしいですね。
松本:で、もう一個。お坊さんがわざわざ仕事を休んで1年間留学しなくても、多少学べる学びの場を作ろうと思って、自分がMBAで学んできたことをほかのお坊さんにお裾分けするための「未来の住職塾」というのを始めました。
大宮:未来の住職塾のゴールは?
松本:今まで通りやってれば大丈夫という時代ではなくなっちゃったので、それぞれのお寺が、これからの事業計画を作れるようにするのが塾の目標です。もともとお坊さんたちの世界って他の宗派と交わることがほぼないんですけど、未来の住職塾は、経営という共通項があって、宗派を超えた学びの場になっています。
大宮:風雲児ですね。
松本:もう10年ちょっとやっているんですけど、仏教界の構造転換というか、それなりに大きなインパクトを与えたと思います。
※AERA 2023年10月23日号