中学生のとき、家庭科でリンゴの皮をむく実習や体育でバスケの授業があったのですが、先生方に「代わりにレポートを提出しますので」と言って、皮むきやバスケの参加を免除してもらうよう交渉したんです。バイオリンのコンサートやコンクールの本番前に、包丁やボールで指を怪我してしまったら一大事だからです。前例はないかもしれませんが、授業の不足分を補う代替案を提出しているので筋は通っている。当時の先生方は快諾してくださってとても感謝しています。理由をきちんと説明すれば大人たちは結構理解してくれるんだなということも、子どもながらに分かりました。「ルールだから」「常識だから」と漫然と受け入れるのではなく、自分が優先するべきものは何なのかを考えながら判断することが大事だと思うようになりました。
実は、私は小中高と修学旅行に行かなかったんです。というのも、小学校のときは大好きな歌舞伎の十八代目中村勘三郎さんの襲名披露公演、中学校はバイオリンのコンクール、高校は自分が出演するコンサートと日程が重なってしまって。でも、そのときも両親は「修学旅行よりもこっちのほうがいいよ」などとすすめたりはせず、私が自分で考えて結論を出せるように話を聞いてくれたんです。これから先の人生で、どちらに行くほうが自分にとっていいのかなと、私なりにしっかり考えて決めました。かなり悩んだのですが、やっぱり襲名披露公演というのは一生に一度しかなく、私が勘三郎さん好きと知った方に譲っていただいた貴重なチケットだったので歌舞伎に決めました。もちろん、考え方は人それぞれなので正解はないのですが、自分で納得して決めたことは後悔しないので、何をするにも自分自身で考えることが大事なんだと思っています。
構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS