「損するだろうと思いながらNISAで投資する人はほぼいないでしょうから、『特定口座から移そう』と考える人は多いかもしれませんね」と、ニッセイ基礎研究所 金融研究部 主任研究員の前山裕亮さん(撮影/小山幸佑)

強烈な利益ならトントン

 前山さんの言う「極端な例」で解説しよう。

 元本10万円で投資した金融商品の含み益が437.5万円ある状態で売却すると、利益の20%(ここでは税率20%で計算)に相当する87.5万円の税金が引かれて360万円分が手元に残る。

 その360万円を新NISAで買い直し、30%のリターンが出ると「360万円×130%=468万円」となる。

 一方、元本10万円+含み益437.5万円(合計447.5万円)のまま保有し続けて30%のリターンが出ると「447.5万円×130%=581.75万円」。

 これを売却した場合、元本は10万円なので、利益の571.75万円から税金20%(114.35万円)が引かれ、手元に残るのは467.4万円。

 新NISAで運用して30%の利益が出た468万円と、ほぼ変わらない。

 まとめ。新NISAで買い直したあと、損しそうなら特定口座のままがいい(そもそも「損しそう」と思ってNISAをはじめる人は少ないだろうが)。

 儲かりそうなら移したほうがいい。そして、損するか儲かるか、現時点ではわからない。この材料をもとに検討してほしい。

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編集/綾小路麗香、伊藤忍

※『AERA Money 2023秋冬号』から抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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