なにげなく使っている季節の言葉、五月のお天気の良い日は「五月晴れ(さつきばれ)」、雨の日は「五月雨(さみだれ)」などと言いますね。さて、「五月」とつくからには6月になったら使えなくなるのでしょうか?
ところがそうでもない…旧暦の皐月(さつき)の語源と、使い方についてお話しましょう。
五月の異称のおさらい「皐月」のほかにもある呼び方は…?
私たちは旧暦の呼び名を、五月は「さつき」と呼ぶと習いましたね。漢字では「皐月」と書くとも習いました。そしてもう一つ、あまり使われていませんが「早苗月(さなえづき)」という異称があることをご存知でしょうか?
「早苗月(さなえづき)」は、その文字どおりに『田植えを始める月』を由来としています。そして「皐月(さつき)」は「さなえづき」が転じて「さつき」となったという説と、耕作のことを古語で「さ」と言うため「稲を植える月」として「さつき」という音がうまれ、『神にささげる』という意味を持つ漢字「皐」が当てられて「皐月」となったとも言われています。
また、狩りに行くのに良い時期であったことから「幸月(さちづき)」、橘(たちばな)の花が咲くことから「橘月(たちばなづき)」という異称もあります。
橘は着物の文様では吉祥模様(きっしょうもよう)と言い、お祝いに相応しい花です。いずれにしても、田植えを行う月であること。その稲は神様へのささげものであること。それを祝う意味を込めた言葉が使われていることがうかがえますね。
そして、旧暦の五月は『梅の実が熟すころ』でもあります…。
梅の実が熟すころ…と「五月晴れ」「五月雨」の関係
では、「五月晴れ」と「五月雨」はいつ、どう使いましょうか?
本来は旧暦の五月の言葉です。今で言うと、6月~7月にあたりますので、実は「梅雨(つゆ)」の頃の言葉となります。つまり、五月晴れ=梅雨晴れ、五月雨=梅雨の雨…という意味があるというクセモノです。
例えば、五月晴れは「(1)さみだれの晴れ間。梅雨の晴れ間。(2)5月の空の晴れわたること」(広辞苑)「(1)五月雨(さみだれ)の晴れ間。つゆばれ。(2)5月のさわやかに晴れわたった空。さつきぞら」(日本国語大辞典・小学館)*下記引用参照
と、辞書にも二つの意味の記載があるのです。俳句や短歌など、季語の世界ではもっとはっきりしていて、それぞれ旧暦に準じています。ですから、季語に親しんでいる方には、五月に「五月晴れ」「五月雨」という言葉を聞くとちょっと違和感を感じることもあるのではないでしょうか。
放送の世界では、「五月晴れ」は五月の晴天に使い、「五月雨」は季語に準じて、梅雨に降る雨に使われているようです。*下記引用参照
緑が色鮮やかになる頃の「五月晴れ」という表現とはそろそろお別れですが、「五月雨」はこれからがまさにシーズンです。
《引用》
*NHK文化研究所参照 リンクあり