1976年、兼重宏行前社長(7月26日に辞任)が出身地の山口県岩国市で「兼重オートセンター」として創業し、店舗を全国に展開。15年には、長男の宏一氏が27歳の若さで副社長に就任した(同)。キャッチフレーズは「やっぱりビッグが一番!」。父子で強気の事業拡大を続け、23年5月には従業員数6千人、全国300店舗以上にまで成長させた。
だが、事故車を修理する際に、わざと車体に傷をつけたり、不要な部品交換をしたりして損害保険会社に保険金を水増し請求していたほか、整備工場に厳しいノルマを課し、20年8月ごろからは、宏一氏の判断で工場長ら従業員の降格処分も頻繁に行われていたという。
帝国データバンク情報統括部の藤井俊部長は同族経営についてこう話す。
「創業者の価値観や経営に対する姿勢を確実に受け継ぐことができるのが同族経営のメリット。ただ、経営の全てを握っているということは同時にデメリットにもなります。特に、ビッグモーターの場合は、急成長を遂げる中で、後継者の育成や事業継承がうまくいかないうちに、会社が社長の器量を超えてしまったのでしょう」
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年10月9日号より抜粋