感情に酔いしれるのではなく、きちんと整理され、デザインされたセンスと、美を追求していくなかで削ぎ落とし研ぎ澄ましていく胆力が必要だと思う。それを軽やかにやってるのが、角野さんなんだ。
私が、「あのライブ、教会のような救いのライブでした」と言ったら彼はこう言うのだ。
「バッハを取り上げるなら、宗教とは切っても切り離せないですから。それで、アップライトともすごい相性がいい、と。あれって、何かこう、祈りに近いというか、自分のためだけに、自分とピアノだけが向き合っている内的な空間が、あそこにあるような感じがバッハに合うな、と」
本当に20代? 20歳下だけど魂年齢は古いんじゃない? ライブの裏コンセプトも、
「自分がクラシックだけじゃなくて、バンドだったり、ジャズ的なことだったりもやるから、ビートのある音楽が好きなんですよね。で、クラシックの中にもビートはあるはずだと。特にそれはバッハに感じるんです」
ほら、バッハも喜んでる。
※AERA 2023年10月2日号
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