AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
時代によって、墓や葬儀、供養の形は変化してきた。人と寺院を結ぶポータルサイトを主宰している著者である井出悦郎さんは、現代にふさわしい供養について模索してきた。そうした経験を踏まえつつ、本書では多角的に「供養という営み」について考察、一人ひとりに合った理想の供養を実現するための方法を考える。思索的な内容とともに具体的な葬儀・供養について考えるために、最初に薦めたい本となった『これからの供養のかたち』。井出さんに同書にかける思いを聞いた。
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「供養」とはなにか? 日常的に使う言葉だが、あらためてその定義を考えると、明快に説明できないことに気づく。
本書は多義的な意味を持つ供養を切り口にしながら、葬儀や墓、お寺とのつきあい──など、仏教と私たちの生活の関わりについて考えなおすためのヒントに満ちている。
「供養とは『供給資養』を略したものだと言われます。『供給』はお供え物を捧げることを指し、『資養』は自らの心を養い、神仏に感謝や敬意を示すことを表します。さまざまな意味がある供養という言葉ですが、本のなかでは主に亡くなった親族らの幸せを祈る『追善供養』の意味で使っています」
著者の井出悦郎さん(44)は銀行、コンサルティング会社を経て独立。ポータルサイト「まいてら」を主宰し、寺院の経営支援に携わってきた。
「組織としての寺を考えると、根幹にあるのが供養です。とても大切なものですが、お寺との付き合いが変わっている今、なぜ供養が必要か、どんな意味があるのか、きちんと説明してないのは問題です。本を書くならば、仏教界の内向きの言葉ではなく、生活者とお寺をつなぐ立場にいる自分が、一般の方にわかりやすい言葉で伝えたいと思いました」
資本主義の最前線であるコンサルティング会社に在職中、井出さんが担当したプロジェクトの中に仏教系大学の経営改革があった。
「大学の事務局には僧侶の方もいらしたんですが、そういう方たちの人柄が温かかったんです。お会いするとホッとするんですよね。会社がある丸の内では株主価値の向上、数字や効率化といった事柄を考えて過ごしていましたが、全く違う世界を感じました」