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インド北部。ダリトと呼ばれるカースト外の最下層にいる女性たちが立ち上げた新聞社「カバル・ラハリヤ」は、紙媒体からデジタルメディアへの挑戦を始める。レイプや差別が横行し、命の危険すらある状況のなかで奮闘する記者たちの運命は──。メディアのあり方をも問うドキュメンタリー「燃えあがる女性記者たち」。リントゥ・トーマス&スシュミト・ゴーシュ監督に見どころを聞いた。
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2016年に「カバル・ラハリヤ」の存在を知り、とても興味を持ちました。カーストの周縁にいる人々の苦境はもちろん知っていましたが、02年から14年間続いている彼女たちの新聞社のことは知らなかった。それ自体が問題だと思ったのです。インドの主流メディアは上部カーストの男性たちに主導され、ニュースは彼らの視点を通して語られているからです。
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カバル・ラハリヤはもともとNGOによる社会実験から始まっています。女性が自分の考えを語り、それをニュースにしてみる。夢や野心を持ち、自分で道を切り開くことに価値があると学ぶためのプログラムでした。彼女たちは自分の地域で起こる性被害や違法な鉱山労働を取材し、女性の視点と声で伝えてきた。彼女たちの活動を追いかけようと決めました。
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3年にわたる取材のなかでもっとも大きな変化は、彼女たちが新聞からデジタルメディアへの移行を成功させたことです。最初のころ彼女たちは記者会見場でも男性記者に囲まれ、どこか見下されているようでしたが、スマホで録音と撮影をするようになると被写体の彼女たちへの扱いが変わってきた。カメラに力があることが認識されていったのです。また彼女たちは非常に賢く、デジタルメディアでは文字とは違う発信をしなければならないと早くから気づいていた。記者が担当するミニ番組やコーナーを作り、取材者の顔と名前を一致させることで視聴者が親しみを持ち、より報道に信頼を寄せるようになっていきます。母親でもある記者たちは「子どもの名前を知っているぞ」と脅迫され、常に身の危険を感じながら取材を続けます。その勇気はどこから来るのか。「自分たちがやらなければ、他に誰がやるのか」という思いが映画からも伝わると思います。
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(取材/文・中村千晶)
※AERA 2023年9月18日号