コロナ禍前のインバウンド需要が高かった時期には、特に外国人観光客がお通し代をめぐって「頼んでいないのにお金を請求されている」などとトラブルになるケースもあった。

 石崎弁護士は、

「日本の居酒屋ではお酒を注文すると、お通しが出てきて、その代金を請求されることが一般的です。酒には『あて』が必要ですが、料理を作るには時間がかかるため、1杯目の『あて』としてお通しを出す。居酒屋とはこういうものだ、という暗黙の了解がありますので契約は成立しているといってよいでしょう」

 と解説する。

 もちろん、客がお通しを断ることはできるが、店側が「席料」の中にお通し代を含めている場合は請求額は変わらない。また、お通し不要とする客の入店を、店側が断ることも可能だ。

説明が必要なケースは

 ただ、お通し代は店によって違う。その代金についても合意があったといえるのだろうか。

 石崎弁護士は「一般的には、お通し代は300~500円程度です。店も客も、その範囲で合意していると言えるでしょう。逆に、例えば大衆居酒屋で1000円を超えるようなお通し代を請求された場合は、合意があったとは言いにくいと思います」と話す。

 また、とある都内の立ち飲み屋では、開店から午後7時までを「ハッピータイム」として酒を安く出していたが、お通しを断った客に対しては、ハッピータイム料金を適用しない方式を取っていた。

「この場合、客側は看板などを見てハッピータイムの料金が適用されると思って酒を頼んでいるでしょうから、店側は、お通しを断ったら料金が高くなることをしっかりと明示するか、言われた時点で客に対し説明する必要があります」(石崎弁護士)

 やはり明示が大切なのだ。

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