だが、議論になった「背脂増量」のケースは判断が非常に難しいという。

 ラーメン店で、卓上にある醤油や一味などの調味料を無料で利用できるのは、疑いの余地がない共通認識だろう。

「では、背脂についての共通認識はどうか」と石崎弁護士は疑問を口にする。

 背脂の増量が無料のラーメン店もある。そうした店はそのサービスを明示しているものの、利用した客がラーメン店の背脂増しはタダなんだと思い込んでしまうのもない話ではない。一方で、背脂の価格高騰が報じられている昨今、店には店の経営姿勢や事情がある。

「チャーシュー増量」は有料が共通認識

「チャーシューを増量してと言った場合は、それは有料ですよね、というのが共通の認識だと思います。その点、背脂はボーダーライン上でしょうか。個人的には、背脂は調味料とは違いますし、背脂(豚)の価格が上がっている状況でもありますから、無料が共通認識だとは言い切れないと思います」(石崎弁護士)

 石崎弁護士は、ラーメン店側が客に有料だと伝えるべきだったと指摘し、こう話す。

「外国人や、日本人でも若い人たちには、お通しの作法は理解されないと思います。席料やチップだと明示した方がよほど分かりやすいですよね。トラブルを避けるためには客に明示するか、あるいは外国人にはお通しを出さないようにするか。あいまいなものを極力、店側が排除していく必要があります。また、客側も不安を感じたらすぐに料金を確認することが大切だと思います」

 黙って相手の理解を期待するより、分かりやすいコミュニケーションを図ることが、一番なのだろう。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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