「お通し代」は暗黙?(写真はイメージです/GettyImages)

 都内にある人気ラーメン店で、客が「背脂多め」で注文したところ、説明がないまま背脂代として100円を請求された一件がSNSで炎上した。これと似た話では、居酒屋の「お通し代」をめぐって外国人観光客が店とトラブルになった事例もある。果たして、こうした明確な事前説明がない飲食代請求はアリなのか。

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 飲食業向けの法務を扱い、自らも焼き肉店を経営する石崎冬貴弁護士によると、飲食店であっても客と店側との間では「契約」が成立しているという。

 客は頼んだメニューを食べる権利があり、その代金を支払う義務を負う。店側は客が注文したメニューを提供する義務があり、そのお金をもらう権利がある。飲食店で食事をするときにいちいち考える人は少ないだろうが、毎回、双方が契約を結んでいるのだ。

「黙示の合意」とは?

 ただ、ここで石崎弁護士がポイントに挙げるのが「黙示の合意」である。

「黙っていても、契約が成立することがあるのです」

 例えば、コンビニのレジに商品を持っていった際、「これを買います」などと口頭で意思表示はしない。大半の客は黙って商品をレジに持っていくはずだ。そして、店側も黙って会計をし、これで売買契約は成立している。

「社会通念上、その行為がどう受け取られるのか。共通認識があったといえるのか、という点が重要になります」(石崎弁護士)

 では、お通しについてはどうなのか。300円程度のお通しであっても客にとっては、食べたいと希望して出されるものではないことは確かだ。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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