ジャニーズ事務所が芸能界で力を握っていたとして、「人気」というひどく頼りないものを頼りに生き抜く過酷さは想像を絶するものがある。表舞台から姿を消し、時には不祥事を起こし、時には命を自ら絶つようなことをしてきた元大スターを私たちは何人も知っている。同世代の男の子たちを同時に何人も競わせるように育てるジャニーズ事務所内が、絶対的な権力者の下に繰り広げられるハードな競争社会=男社会の縮小版であったことは想像に難くない。ニッキの記事は今読むと、とても示唆的だ。

錦織 実はジャニーさんは、ジュニアの子たちが横のつながりを作るのを嫌がってた。ジャニーさんは、ジャニーさんに向かってみんなのベクトルが向かってるとか、ジャニーさんからの流れがなきゃ嫌なの。「ここ」と「ここ」が仲いいとか。そういうのをジャニーさんは嫌いだった。

 これと全く同じことを、AV女優をしていた女性から聞いたことがある。事務所はAV女優どうしのつながりを嫌い、明確に禁止することもある。女優どうしが仲よくし、情報交換されたらまずい時に、上の人はそういう操作をすることがあるのだ。ジャニー喜多川氏による性加害の口封じには、被害者たちを連帯させず、競争させるのが最も効果的だったのだともいえるだろう。

 藤島ジュリー景子社長の引責辞任記者会見からは様々なことを考えさせられた。ヒガシは相変わらず美しく、これまで誰もが乗りこえられなかった加齢という壁を、涙と汗(ヒガシはこの言葉を記者会見の時に何度か使ったが、文字通り、それはヒガシの信条とするものなのだろう)で乗りこえてきたのだと思った。まさに美魔男(ビマオと呼びましょう)。これもまたニッキの言葉を引用するが、ニッキは、加齢していく自分を責め続けてきたようだ。

錦織 たとえば滝沢(秀明)の舞台とか、毎年大晦日にやってるカウントダウンコンサートにも何度か出てたよ。もちろん立候補じゃなくて、呼ばれて出てるんだけど、ステージに上がっても心の中で「ダメダメダメダメ、こんなの老害老害……!」って自分で自分のことを思ってるんです。「何やってんだお前、早くはけろ」って。(略)俺は俺に叱られてるんです。

 若い頃に、「こんなんじゃない」と思いながらも、大人たちのビジネスに巻き込まれ、その後の人生を決定づけられながらも、まさにそのビジネスの価値に最も苦しめられてきたのがニッキであり、この声は、恐らく女性を含む全ての元アイドルを代弁するような声に私には聞こえる。そういう過酷さと裏腹にあるのが、芸能界であり、それはどうしてもある種、暴力装置に簡単になり得るものなのかもしれない。

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中世ヨーロッパの王朝崩壊を描く絵画のよう