このウワサは、全国的に広まった。インターネットもない時代、子どもたちの「口コミ」だけで広まっていったのだ。もちろん、当時何冊もあったゲーム攻略雑誌に、そのウワサを子どもたちが投稿し、掲載されたという要因もある。当時は、ゲームのバグや製作者が意図的に仕込んだ隠し要素を発見し、ゲーム雑誌に投稿するということが流行っていた。

 自分が発見した裏技が雑誌に載ることはステータスであり、友だちが知らない裏技を知っている子どもは英雄だった。だが残念ながら、SFC版『ドラゴンクエストV』では、エスタークは絶対に仲間にならない。どうやら、モンスターを仲間にするシステムの中で、仲間になりにくいレアなモンスターを仲間にしたという自慢話がこうじて、「俺は(友達が、兄が、知っている人が)エスタークを仲間にした」と言ってしまったことが元凶だということらしい。

 さすがに、実際にエスタークを仲間にした人物が登場しない以上、ウワサはデマだと言うことになる。だが、話はこれで終わらなかった。当然、そのウワサは制作スタッフの耳にも届く。そのせいかどうかはわからないが、次作である『ドラゴンクエストVI 幻の大地』では、隠しボスである“ダークドレアム”を倒すと主人公たちの味方となり、ラストのボスを倒してくれる隠しイベントが発生する仕様になった。

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