この1周年を機に、日塔さんがラーメンに向き合う気持ちは一気に変わった。お客さんに喜んでもらうためにはラーメンの技術を上げ続けるしかない。そう考え、毎日限定ラーメンを作るようになった。新しいラーメンを作り続けることによって、おのずと技術が磨き上げられていく。それを教えてくれたのは、同じラーメン業界の先輩店主たちだった。
「『㐂九家』の店主・大野さんからのアドバイスがきっかけでした。限定ラーメンを作り続けて、若いうちにたくさん技術を吸収した方がいいと言われたんです。『㐂九家』さんをはじめ、『寿製麺 よしかわ』の吉川店主、『自家製手もみ麺 鈴ノ木』の鈴木店主、『とんちぼ』の丸岡店主など皆さんにさまざまなことを教えていただき、何もお返しできないのになぜこんなに助けてくれるんだろう? と感謝するしかありませんでした」(日塔さん)
限定ラーメンをきっかけにSNSでの口コミが広がり、そのまま人気店に。先輩店主は日塔さんに食材や製法など惜しみなくレクチャーしてくれて、飲み会の席でもずっとラーメンの話で盛り上がった。味のブラッシュアップも、先輩の助けなくしてはなかったという。
「今年で5年になりましたが、たくさんの方に助けてもらってきた5年間でした。おみこしの上に乗せてもらっている感覚でここまで来ました。先輩方も常に学び続けているので、自分も食らいついていくしかありません。走り続けて、最後の最後に自分が良かったと思えるかどうかが大事だなと思っています」(日塔さん)
時代が流れていく中で、ずっと同じラーメンが愛されるとは限らない。荻窪の老舗「春木屋」が“変わらないために変わり続ける”(「春木屋理論」)と言われているのと同様、古き良きラーメンもブラッシュアップがあるからこそ生き残れるのだ。日塔さんもそれを胸に、今日も自分の技術を磨き続ける。
次回の記事では「麺屋 真心」の店主・日塔さんの愛する名店を紹介する。(ラーメンライター・井手隊長)